AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 4月16日 制御性T細胞を誘導する樹状細胞の同定(4月14日 Nature オンライン掲載論文)

4月16日 制御性T細胞を誘導する樹状細胞の同定(4月14日 Nature オンライン掲載論文)

2025年4月16日
SNSシェア

食物や腸内細菌に対するアレルギーを抑制する制御性T細胞(Treg)の誘導にRORγ分子陽性の樹状細胞の一つ (DC1) が関わることがわかっているが、まだまだ実態はわかっていない。つい先日もTregと相互作用する樹状細胞から見ると必ずしもDC1が直接Tregを誘導しているわけでないというロックフェラー大学からの論文を紹介したところだ(https://aasj.jp/news/watch/26362)。方法論がユニークなので面白いと思っていたが、今日紹介するニューヨーク大学 Dan Littman 研究室からの論文により、Treg誘導に関わる真打DCが特定されると、これまでの研究がなんだったんだろうと思ってしまう。タイトルは「Prdm16-dependent antigen-presenting cells induce tolerance to gut antigens(Prdm16依存性の抗原提示細胞が腸管抗原のトレランスを誘導する)」だ。

RORγは様々な細胞で発現しており、しかもDCのサブセットも多い。従って、単純にDCでRORγをノックアウトするこれまでの研究では抗原提示でTregを誘導するDCは特定できない。そこで、RORγのクロマチン領域をATAC-seqを用いて調べ、RORγ陽性細胞でも使われている領域が異なっていることを突き止める。

そして、これらのRORγの発現調節領域の一部を削る実験から、転写開始点から7kb下流の領域をノックアウトすると、Tregの誘導が障害されることを突き止める。すなわち、Tregの誘導にはこの領域を発現調節に使っている細胞が必要なことがわかる。

この細胞を single cell RNA sequencing を用いてさらに探索していくと、ヒストンメチル化に関わる酵素Prdm16を発現している細胞がT細胞に抗原提示を通してTregを誘導するDCであることを発見する。

次にPrdm16がTreg誘導DCに必要かどうか調べるため、この分子をRORγ陽性細胞でノックアウトすると、Prdm16陽性細胞はが腸管から消失するとともに、移植したTreg細胞の維持が全くできないことを確認する。

最後に、RORγのDC特異的発現調節領域をノックアウトしたマウス及び、Prdm16をRORγ細胞でノックアウトしたマウスを同時に用いて、腸内細菌や食物に対するトレランス誘導について調べると、腸管でのTreg誘導がそれぞれ傷害されてトレランスが成立しないことを確認している。

また、卵白アルブミンで免役して喘息を誘発する実験系でもこのTreg誘導DC細胞が経口的に投与した抗原に反応して喘息を防ぐオーラルトレランス誘導に必須であることも示している。

最後に、人間の腸でも同じようにPmdr16とRORγを発現したTreg誘導専門のDCが存在するか様々なデータベースを検索し、骨髄ではこのような細胞は存在しないが、腸の固有層には大腸小腸を問わず存在し、また扁桃にも存在していることを明らかにしている。

結果は以上で、この研究ではまだPrdm16陽性DCがTregを誘導するメカニズムは明確にしていないが、抗原特異的にTregを誘導できる抗原提示細胞を特定できたことは重要で、今後試験管内でのTreg誘導実験などを使って、メカニズムが明らかになるのではと期待できる。とすると、様々な疾患でのTreg誘導療法が現実のものになると期待する。

  1. okazaki yoshihisa より:

    1:Prdm16陽性DCがTregを誘導するメカニズムは明確にしていないが、抗原特異的にTregを誘導できる抗原提示細胞を特定できたことは重要!

    2:様々な疾患でのTreg誘導療法が現実のものになる可能性あり。
    Imp:
    新たな細胞治療法誕生か?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。