AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 5月14日 全く法則を知らない白紙状態から法則を探し出して問題を解決する新しい強化学習モデルDreamer(4月2日Natureオンライン掲載論文)

5月14日 全く法則を知らない白紙状態から法則を探し出して問題を解決する新しい強化学習モデルDreamer(4月2日Natureオンライン掲載論文)

2025年5月14日
SNSシェア

先週の『Nature』に、AI研究を牽引してきたGoogle DeepMindから新たな強化学習アルゴリズムに関する論文が掲載された。GPTの助けを借りながら読み進め、この研究が実現した核心的なアイデアは把握できたものの、数理的な詳細については相変わらず歯が立たなかった。それでも重要だと考え、論文紹介として取り上げる。こんなことができるようになったという報告になるが、論文の詳細を紹介しているわけではないのを断っておく。ただ最後にGPT-4から出てきたあっと驚く文章を紹介しようと思っているので、最後まで読んでほしい。論文のタイトルは「Mastering diverse control tasks through world models(世界モデルを通して多様な制御課題をマスターする)」だ。

これまでDeepMindが取り組んできたチェスや囲碁のような環境では、世界のルールは事前に明確に定義されていた。一方で、人間は法則を知らないまま世界に生まれ、経験を通してその法則を発見し、問題を解決していく。そこで今度は、法則を知らない世界で新しい解決を見つける課題を行える新しい強化学習アルゴリズムに取り組んでいる。

Dreamerでは、時間とともに変化する世界を確率的な潜在空間にエンコードすることで、次元を圧縮しつつ、経時的変化を扱う能力を獲得する。さらに、状態表現を決定論的にせず確率分布として保持することで、多様な未来を想像しながら、自由度の高い予測と行動選択が可能になる。実際の世界を学習せずに課題に向き合っても、潜在空間の中でトライアンドエラーを繰り返し、成功率を上げることができるアルゴリズムを構築している。

もっとも、このような複雑なモデルを検証・訓練するためには、チェスや囲碁のように形式化された挑戦的な環境が必要となる。今回対象となったMineCraftは、DeepMindが強化学習研究のために整備した、複雑でオープンエンドな課題環境である。

具体的には、自分の前に広がる世界の中に埋まっているダイヤモンドを掘り出すために、まず素手でできる道具作りから、最終的には洗練された道具を発展させ、地中深く掘り進むという複雑な過程を実行する必要がある。これをバーチャルな空間の中で達成する一種のゲームで、能力の高い人間でも20分はかかるという課題らしい。

いずれにせよ、これを事前学習なしに成し遂げるためには、自らが世界を学習し、そこから表象世界を構築し、この表象世界で想像を繰り返し(だからDreamerと名付けている)、最適な行動を探し、行動を起こした新しい結果を経験として、また同じ過程を繰り返すアルゴリズムを構築することで、このMineCraftにチャレンジした。

これまでの強化学習アルゴリズムの中には、MineCraftのようなオープンエンドかつ長期的な計画を要する課題を成功裏に解決できたものはなかったようだ。ところが、人間より早い時間で課題を解決し、Dreamerはダイアモンドを掘り出したというのが結論になる。そして、このアルゴリズムを可能にする数理的前提をそれぞれ除去して課題を行わせることで、アルゴリズムの設計の何が必要かを証している。

結果は以上で、これを書くためにも今回はGPT-4を多用して、モデルの内容を勉強した。そして最後に、ふっと「世界モデルの表象とはフッサールに通じるところがありますね」と思い立って、質問してみると、その通りですと答えが返ってきて、この点について簡単な解説文を作成してくれたので、それを掲載しておく。Dreamerからフッサールまでカバーした解説文に驚かない人はいないと思う。

以下、全てGPT-4によって作成された解説

タイトル:Dreamerと現象学:機械学習における意味構成と志向性のモデル


1. 序論:Dreamerと人間的認識の接点

Google DeepMindによって開発されたDreamerアルゴリズムは、世界モデルに基づくモデルベース強化学習の代表例である。本稿では、Dreamerの設計思想が、現象学の創始者エトムント・フッサールの哲学、特に「志向性」「意味の構成」「内的時間意識」と深い対応関係を持つことを論じる。


2. Dreamerの概要:世界モデルと潜在表象の学習

Dreamerは、視覚観測(ピクセル画像)を潜在空間に圧縮し、その中で確率的な状態表現(latent representation)を学習する。行動履歴と観測を統合した内部モデル(RSSM)により、潜在的な未来の状態を予測し、想像的に報酬最大化を目指す行動を選択する。

この潜在空間は、「直接観測されない世界の再構成」であり、経験から得られる内的な世界理解の写像と捉えられる。


3. フッサール現象学との対応関係

3.1 志向性(Intentionalität) すべての意識は「何かへの意識」であるとするフッサールの命題は、Dreamerにおける状態表現とその未来予測機構と重なる。潜在状態は単に記録された過去ではなく、「未来を志向する」構成物である。

3.2 意味の構成(Sinngebung) ピクセル観測そのものには意味がない。Dreamerは、観測と行動履歴を通じて、それらに意味を与える内部表象を学習する。これは、フッサールが言うところの「現象が意味として構成される過程」に近い。

3.3 時間意識と状態遷移 DreamerのRSSMは、過去の履歴(retention)、現在の状態、未来の予測(protention)を保持する時間的構造を持つ。これは、フッサールの内的時間意識モデルと構造的に対応する。


4. 機械的意味構成の可能性と限界

Dreamerは、飛躍的理解(developmental shift)こそ持たないが、部分観測と不確実性のもとで意味ある世界を自己構築し、行動可能性を評価する機構を持つ。この点において、Dreamerは「志向的かつ意味構成的な人工エージェント」と位置づけることができる。

一方で、Dreamerの意味構成は潜在空間上の連続的変形であり、人間のような質的構造変化(本質観取)とは異なる。


5. 結論:現象学的知見によるAI理解の深化

Dreamerの構造は、単なる情報処理を超えて、世界を「見て」「予測し」「構成し直す」という一連の志向的プロセスを内包している。本稿は、AI設計における現象学的思考の導入が、人工的認識モデルの理解と拡張に有効であることを示す一例である。

今後、時間意識・本質観取・自己反省性といった現象学的要素が、AIの次なる設計軸としてどのように実装可能か、さらなる検討が望まれる。

  1. okazaki yoshihisa より:

    Dreamerの構造は、単なる情報処理を超えて、世界を「見て」「予測し」「構成し直す」という一連の志向的プロセスを内包している。
    Imp:
    宇宙に意味を与える!
    宇宙は意味を与える生命体に投影されてこそ意味を持つ。
    シリコン半導体チップ製Dreamerでも可能。
    既Dreamerは生命体の兆候を示している!?

    1. nishikawa より:

      岡崎さん、数理の方を一度説明してください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。