遺伝子の解析が可能になったホモ属(ネアンデルタール、デニソーワ、そして我々サピエンス)は全て、サルから分かれた様々なヒト属のアフリカでの進化の結果形成されたもので、アフリカでのヒト属の進化研究が熱を帯びてきた。
一般的には、最初のヒト属が400万年前に2足歩行を確立したアウストラロピテクスで、200万年前まで少しづつ分化したサブグループ( anamnennsis, frarensis など)を生み出しながら200万年前まで続いたと考えられている。
この中から分かれたHomo属(H.abilis)が260万年ぐらい前に別れたと考えられているが、アフリカにはこれ以外に同じくアウストラロピテクスから分かれたパラントトロプスが東アフリカで生息していた。すなわち300万年前から2200万年前の間には、アフリカには3種類のヒト属が同時に存在していた可能性が高く、研究の焦点になっている。
今日紹介するアリゾナ州立大学からの論文は、エチオピアの Ledi-Geraru で始まった発掘研究から発見された歯の化石についての分析で、同じ場所からほとんど同時期にアウストラロピテクスとホモ属の歯が出土したことの報告され、8月13日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「New discoveries of Australopithecus and Homo from Ledi-Geraru, Ethiopia(エチオピア Ledi-Geraru でのアウストラロピテクスとホモ属の新しい発見)」だ。
Ledi-Geraru は焦点になっている250万年から300万年前の地層が存在していることから、実際にはかなり広い範囲にわたっているが、アリゾナ州立大学を中心に2002年から発掘が続けられている。その中から見つかってきたのが13コの歯の化石で、ほぼ1kmも離れた3カ所から発見されている。登呂遺跡でも十分広いが、これほど広い範囲の発掘プロジェクトから、このような小さな歯をしっかり見つけ出せているのに驚く。
まだ研究途上で、年代測定はほぼ完全に地層学に依拠して行っている。そして、今回見つかった LD302 及び AS100 は地層学的に278万年から259万年前の化石で、形態学的にホモ属のものと特定している。一方、そこから1kmほど離れた地層から出土した LD750 と LD760 は265万年前の地層で、形態の検討からアウストラピテクスのものと結論している。
と、簡単に紹介してしまったが、歯の計測と評価の過程がともかくすごい。素人目にはほとんど区別できない多様性の中から、最も確率の高い結論を導くための議論が行われている。特に問題なのは、最終的にアウストラロピテクスのものと結論した LD750、LD760 が、アウストラロピテクスの代表 afarensis や最も最後まで生きていた garhi とも一致しないこと、しかしホモ属だけで無く、同じ時期に東アフリカに生息していたパラントトロプスの歯とも一致しない点で、考察の結果アウストラピテクス afarensis が独自に進化してきた新しいサブグループではないかと結論している。
いずれにせよ、アウストラロピテクスとホモ属が1kmしか離れていない場所で10万年程度オーバーラップして存在していた可能性がある。もちろん化石は出ていないが、パラントトロプスも東アフリカに生息しており、それぞれの能力についての研究が重要になる。
アウストラロピテクスはオルドワン型石器で有名だが、その後ホモ属を特徴付けるアシュール型石器へと変化していくのだが、エチオピアはこの進化の中心地と言えるので、石器との対応がこれからの課題になると思う。
考察の結果アウストラピテクスafarensisが独自に進化してきた新しいサブグループではないかと結論している。
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新たなサブグループの発見か!