これまで認可されたアルツハイマー病 (AD) の原因に作用する薬剤としては、アミロイドβを除去する抗体治療しか存在しない。また次の治療薬として多くの研究が行われているのは、神経細胞死に直接関わる異常Tauを除去する方法の開発だ。しかしこのブログで紹介したように、炎症や神経細胞の活性を変化させてAD進行を止めるための新しい標的が続々特定されており、新しい研究ブームが起こっていると期待している。
今日紹介する北京大学からの論文は、これまで注目されてこなかったコレシストキニンB受容体 (CCKBR) の活性化によりアミロイドβ蓄積を抑えられる可能性を示した研究で、11月20日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Elucidating pathway-selective biased CCKBR agonism for Alzheimer’s disease treatment(シグナル経路選択的CCKBR刺激がアルツハイマー病の治療に利用できる理由)」だ。
コレシストキニンは消化管ホルモンと知られておりCCKBR阻害剤も急性膵炎治療目的で開発されているが、この研究ではADが最初に始まる内嗅皮質に強く発現していることに着目して研究をスタートさせている。そして、ADモデルマウスで内嗅皮質のコレシストキニンを調べると、発現が強く抑制されていること、試験管内でのアミロイドβの神経細胞機能抑制実験にコレシストキニン8 (CCK8) を加えると、アミロイドβによる毒性を抑制することから、適切なCCKBR刺激剤を開発することで、ADでアミロイドβ蓄積が始まる初期段階を抑えるシグナルになるのではと着想する。
CCKBRを刺激できるコレシストキニンにはガストリンも含めて数種類あるが、CCK8sが最も効果が高いことを確認した後、CCK8s刺激によるシグナル経路を詳しく調べ、CCKBRが3種類のGタンパク質と共役することを確認した後、それぞれのGタンパク質選択的にCCKBRを活性化でき、脳血管関門を通過できるペプチド開発を行っている。
クライオ電顕によるCCK8sと受容体の結合、そして変異を導入することで発生する、共役するGタンパク質の変化を詳細に調べ、最終的にGiとの共役を強く誘導するペプチドz-44とGqとの共役を強く誘導するペプチド3r1を開発している。
こうして開発したペプチドを、アミロイドβが増加しプラーク形成が急速に進みADが発症する5xFADマウスに3ヶ月投与を続け、ADを防げるか調べると、3r1を投与した群でのみ記憶テストが改善することを発見する。またこれと平行して海馬のプラーク形成も強く抑制されることを確認している。即ち、3r1を投与することで、アミロイドの蓄積を抑えることができる。
最後に作用機序を明らかにするため、3r1投与による神経細胞の変化を転写レベルで探索している。結果だが、3r1刺激によりADAM10タンパク質切断酵素が上昇する事で、異常アミロイドを形成するγシクレターゼ等のタンパク質切断酵素の作用に拮抗することが最も重要な作用ではないかと結論している。ただADAM10だけでなく、細胞内の神経伝達に関わるPlcb4の上昇や、炎症を抑える分子の上昇など、神経活性に関わる分子が誘導されることも効果に寄与していると結論している。 結果は以上で、初期のアミロイド蓄積が拡大する時期を狙った薬剤になるが、これまで注目されなかった新しい分子CCKBRが介入可能な標的であることを示した意義は大きい。

適切なCCKBR刺激剤を開発することで、ADでアミロイドβ蓄積が始まる初期段階を抑えるシグナルになるのではと着想する。
imp.
なんと!
こんな標的があるとは、、、