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2月18日 膵臓ガンのマトリックスとオートファジー(2月16日 Cell オンライン掲載論文)

2026年2月18日
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このブログでも紹介してきたように、膵臓ガンは細胞内の不要物を再利用するオートファジーを活性化させて増殖していると考えられている。しかし、オートファジー阻害剤の効果は期待されたほどではない。

今日紹介するニューヨーク大学からの論文は、膵臓ガンのオートファジーレベルは極めて多様で、増殖には確かにオートファジーは効果があるが、抗ガン剤の感受性にとってはオートファジーは逆の効果があることを示した研究で、2月16日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Extracellular matrix sensing regulates intratumoral heterogeneity of autophagic flux(細胞外マトリックスのシグナルは腫瘍内のオートファジーの多様性を調節している)」だ。

この研究では、膵臓ガンを2次元培養するとオートファジーが低い均質の細胞として増殖するが、マトリックスを含むマトリゲル3次元培養にするとオートファジーレベルが極めて多様になることに気づき、膵臓ガンが単純にオートファジーが高いというより、マトリックスに応じてオートファジーレベルを調節していることを明らかにする。

後は、膵臓ガンでオートファジーに必要な分子の転写因子をポジティブに調節しているのが神経線維腫症の原因遺伝子NF2で、逆にネガティブに調節しているのがYAP分子である事を、クリスパースクリーニングにより突き止める。

NF2とLAT2は通常細胞内の栄養状態を感知してオートファジーを活性化するが、YAPは相方のTEADと協力してレプレッサーとしてオートファジー関連遺伝子を転写レベルで抑制していることになる。またマトリゲル内での3D培養の結果から、YAPを活性化するのはマトリゲルに含まれる様々なマトリックスの可能性が高い。

そこで、YAPを活性化するマトリックスを探索し、最終的にラミニンとそれを感知するインテグリンα3がYAP活性化に関わることを明らかにする。

膵臓ガンは周囲に線維芽細胞が密集し、線維化が進んでいることが特徴とされ、これが膵臓ガンが悪性である重要な要因として考えられてきた。ところがこの研究では、ラミニン・インテグリン・YAPはオートファジーを抑制する方向に働くことから、ガンの増殖にとってはネガティブな作用を持つことになる。とすると、膵臓ガンのマトリックスも単純にガンの悪性化を助けていると言えなくなる。

この問題に対して、膵臓ガン細胞株や膵臓ガン患者さんから採取した膵臓ガン細胞のオルガノイド培養を行い、インテグリンをノックアウトしても細胞の増殖に全く影響がないが、オートファジーを抑制するクロロキンで処理した時に、インテグリンの膵臓ガン抑制効果が見られるようになることを示している。即ち、インテグリン/YAPを抑制してオートファジーを高めることでよりクロロキンへの感受性が高まることになる。ただ、オートファジーだけを膵臓ガン治療の標的にすることはないので、より臨床に近い、クロロキンとゲムシタビンによる治療実験系でインテグリンノックアウトの効果を調べると、ゲムシタビンの抗腫瘍効果をインテグリン/YAPによるオートファジー抑制が促進することを発見している。

この実験はデータもそれほど明確ではなく、そのまま真に受けられるかはよくわからないがオートファジーは増殖を助ける一方、ゲムシタビンなどの感受性を下げる効果があり、これが膵臓ガンの治療を難しくしていることになる。

結果は以上で、膵臓ガンを単純な細胞集団として捕らえるのではなく、周りの環境に応じて多様化して、異なるストレスに集団として対応しているやっかいな集団とみることの重要性を示した研究と言える。ただ、その分実験はわかりにくい。

  1. okazaki yoshihisa より:

    インテグリン/YAPを抑制してオートファジーを高めることでよりクロロキンへの感受性が高まることになる。
    クロロキンとゲムシタビンによる治療実験系でインテグリンノックアウトの効果を調べると、ゲムシタビンの抗腫瘍効果をインテグリン/YAPによるオートファジー抑制が促進する。
    Imp.
    オートファジーup⇒クロロキン感受性up
    オートファジーdown⇒ゲムシタビン薬効up
    なかなか難しい。

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