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3月8日 概日リズムの振幅を調整して老化を防ぐ(3月4日 Cell オンライン掲載論文)

2026年3月8日
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3月4日 Cell にオンライン発表された中国からの論文の最後は、昨日と同じ北京の国立生物科学研究所からの論文で、視床下部の概日リズムを核酸アナログ3-deoxyadenosine (3dA) で調整すると老化マウスの運動機能や代謝が改善する抗老化作用が得られるという研究で、タイトルは「Restoring circadian rhythms in the hypothalamic paraventricular nucleus reverses aging biomarkers and extends lifespan in male mice(視床下部房室核の概日リズムを回復させると老化のバイオマーカーを逆回転させ雄マウスの寿命を延ばす)」だ。

このグループは概日リズムを研究する中で、新しいリズム分子としてATP-aseの一つRUVBL2を発見し、また核酸アナログ3dAを投与することでRUVBL2とBMAL1との相互作用を促進して概日周期による転写活性の変化の振幅の大きさを高めることについて、トップジャーナルに発表していた。この操作の抗老化作用とそのメカニズムを解析したのがこの研究になる。

研究で概日周期でライトオフにする1時間前ZT11に3dAを投与すると、概日リズムのマーカーになるPer2の転写が高まる。即ち、リズムをそのままにリズムによる遺伝子発現の増減の差が大きくなることをまず確認して,3dAで概日周期の振幅を大きく出来るというこれまでの研究を確認している。

次に、老化マウスに3dA投与を1ヶ月行い様々な生理機能を調べると、グルコース代謝が改善し、酸素摂取量が高まり、肥満が防げる。その結果、筋力が高まり、なんと寿命がほぼ10%延長することを明らかにしている。

抗老化という観点でバイオマーカーを調べると、血清中の炎症マーカーは低下し、肝臓細胞老化細胞が低下し、筋肉のDNAメチル化で測定する老化指標が若返っている。即ち、身体の細胞レベルで若返りが進んでいることが明らかになった。

この身体全体のリズムが調整される原因として、ホルモン分泌量を調べると、老化に伴って日内リズムの振幅が小さくなっている副腎皮質ホルモンなどの分泌量が若いレベルに戻ることが強く示唆されたので、視交叉上核のリズム指示を受けて身体に伝える視床下部房室核 (PVN) の神経活動への3dAの影響を調べると、興奮神経の数が増えPVN細胞のリズムを支配するPer2やCryの転写レベルの振幅が2倍近くに達することを明らかにする。即ち、PVNでの概日周期の転写サイクルの振幅が大きくなり、リズム変化を強く身体に伝えることで、抗老化作用が得られる可能性が強く示唆された。

そこで、様々な方法でPVNの興奮を抑えると、3dAの効果は消失しすることがわかった。また、3dAの作用を媒介するRUVBL2―ATPaseをノックアウトしたマウスを作成すると、やはり3dAの抗老化作用は全くなくなることを示している。

最後に、リズムに合わせてPVNの興奮を光遺伝学的(実際には化合物投与を用いて)に高めると3dAと同じ効果が得られ、ホルモンの分泌が高まり、炎症が低下し、代謝が改善することも示している。

調べてみると3dAは冬虫夏草の成分として知られているようで、さすがに中国の研究だと感心するが、長い研究に裏付けられた面白い論文だと思う。ただ、3dAを投与し続けて大丈夫かどうかはわからない。もともとRUBL2は様々な発ガンにも関わるので、注意が必要だと思う。

以上、中国からの論文3編を紹介したが、どれもレベルが高いと実感する。

  1. okazaki yoshihisa より:

    リズムに合わせてPVNの興奮を光遺伝学的(実際には化合物投与を用いて)に高めると3dAと同じ効果が得られ、ホルモンの分泌が高まり、炎症が低下し、代謝が改善することも示している。
    imp.
    中国
    生命科学のオピニオンリーダーになりました。

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