我々哺乳動物には大脳表面を覆う6層構造を持つシート状の構造が存在しており、このおかげで高度の認知機能を発達させてきた。カラスのように鳥類でも高い脳機能を示す種が存在するが、これは新皮質ではなく Nidopallium と言う領域を発達させている。これらについてはChatに図を作成させたので、少し難しい今日の論文紹介を理解する助けに使ってほしい。


今日紹介するイェール大学からの論文は新皮質の進化発生学研究で、3月18日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Adaptive evolution of gene regulatory networks in mammalian neocortex(哺乳動物新皮質での遺伝子調節ネットワークの適応進化)」だ。
久しぶりにオーソドックスな進化発生学の論文を読んだ気がする。もちろん専門誌には多く掲載されていると思うが、そこまで目を通すことができない。しかしこのブログを始めた頃は、一般紙にも多く掲載されていた
新皮質進化の過程を探るには、新皮質発生過程を調節する遺伝子の探索から始める。そして多くの場合それは様々な遺伝子の転写を調節する転写因子になる。この研究でも新皮質2-4層と5-6層の細胞を別々にラベルして、遺伝子発現とヒストンマークによるエンハンサー探索を行い、最終的に新皮質形成時に全ての細胞で最も高く発現している転写因子Zbtb18を特定する。そして、これにより調節される遺伝子が、鳥類やは虫類の脳の発生に関わる遺伝子とは大きく異なることを確認し、Zbtb18を中心とする遺伝子ネットワークが哺乳類特異的である事を明らかにしている。
Zbtb18はSTAB2、ROBO1など新皮質形成に重要な分子を調節すると考えられるが、その中のCux2遺伝子を指標に、Zbtb18がCux2上流のエンハンサーに結合して、特に2-4層の神経細胞の発生を調節することを明らかにしている。特に神経細胞分裂が終了した後の細胞分化や、神経ネットワーク形成を調節していることを実験的に明らかにしている。
また選択的にZbtb18遺伝子ノックアウト実験から、Zbtb18が下流の様々な遺伝子の発現調節を介して、層構造の形成に必要な神経連絡とともに大脳内の様々な領域との神経結合を軸索進展を介して調節していることを、詳しく調べている。例えば、Zbtb18はRobo1の発現を介して大脳の反対側への軸索形成に必須である事も示している。他にも様々な実験が行われているが割愛する。
要するに発生初期からZbtb18は新皮質ネットワーク形成のマスター遺伝子として働いているという発見と、これと協調するようにCux2、Satb2、Robo1など神経発生に関わる様々な遺伝子の調節領域にZbtb18結合領域が進化してきたことを示したのがこの研究のハイライトだ。
そして、この研究で発見されたZbtb18とその下流の分子は、自閉症などの遺伝子多型が見られる遺伝子として知られており、自閉症のリスク多型を解する点でも重要なヒントとなることが示されている。

発生初期からZbtb18は新皮質ネットワーク形成のマスター遺伝子として働いているという発見と、これと協調するように、Cux2,Satb2,Robo1など神経発生に関わる様々な遺伝子の調節領域に、Zbtb18結合領域が進化してきたことを示した
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発生初期からZbtb18は新皮質ネットワーク形成のマスター遺伝子として働いている!