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4月29日 Preeclampsia(妊娠高血圧腎症)のアフェレーシス治療(4月27日 Nature Medicine オンライン掲載論文)

2026年4月29日
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現役時代、様々なc-Kitチロシンキナーゼ型受容体ファミリーの機能をプローブにして生命現象を調べていたが、Flt1 だけはモノクローナル抗体を作成できず、研究の対象に出来なかった。ただ、2003年ぐらいから Preeclamsia の重要な原因が、胎盤特異的なスプライシングの結果、妊娠時期に分泌される可溶性の Flt1 (sFlt1) が原因である事が明らかになり、大きく注目されるようになった。

本来 Flt1 は細胞膜上に存在し、VEGFやPIGFと結合して細胞内シグナルを伝達するチロシンキナーゼ型受容体で、胎盤の血管形成に重要な役割を演じている。オルタナティブスプライシングで細胞膜ドメインが飛ばされて出来る分泌型の Flt1 (sFlt1) は、血管内皮膜上の Flt1 と拮抗するため、胎盤だけでなく様々な臓器の血管内皮が傷害され、この結果高血圧や蛋白尿を示す Preeclampsia が発生する。従って、sFlt1 の拮抗作用を抑えることができれば preeclampsia を治療することができる。

今日紹介するロサンゼルスの Cedars-Sinal 医学センターからの論文はヒトsFl1と強く結合するモノクローナル抗体をセファロースに結合させ、患者さんの血液をそのカラムを通すことで sFlt1 を除去するという極めてシンプル方法で Preeclamsia を治療できないか調べた研究で、4月27日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Targeted removal of soluble Fms-like tyrosine kinase 1 in very preterm preeclampsia:a pilot trial(可溶性のFlt1の除去による出産前の preeclampsia の治療)」だ。

この研究は2003年に sFlt1 と preeclampsia の関係を明らかにした Karumanchi の研究グループから発表されている。発見から23年、ようやくヒトでの臨床治験にまでこぎ着けたと言え、本当に時間がかかっている。Preeclampsia は妊娠20週以降に急に発症するため、治験のプロトコル設定が難しいのだろう。

ようやく臨床まで進んだこの研究も、最初は妊娠していない正常人のボランティアを募り、血液の25%がカラムを通って身体に戻るというプロトコルで、副作用がないことを確認した後、preeclampsia の患者さんに、最初は同じ25%の血液をカラムに通すプロトコルの安全性を、母子共のコンディションを指標に確認している。ただ、この時 sFlt-1 レベルを17%程度低下させられることを確認した後、通常ならそのまま帝王切開で母子を守る( preeclampsia の治療は妊娠を中断させる以外にない)妊娠31週目の preeclampsia9 ケースについて、入院後1−2日で、50%の血液をカラムに通したあと身体に返す治療を行っている。その後全ての患者さんは10日前後で帝王切開により出産している。

結果だが、血中sFlt-1は17%程度低下し、血圧は収縮期で3.5mmHg、拡張期で4.3mmHgほど低下している。また、尿中タンパク質の量は33%低下している。血圧は Flt-1 の低下が大きいほど改善するので、sFlt-1 が preeclampsia の重要な要因である事を裏付けている。

全く専門外の私から見ると、母体の症状についてはそれほど効果があるようには思えない。また、sFlt-1が低下した後も、また上昇傾向に移るリバウンドがかなりの割合で見つかる。しかし、妊娠出産という観点で見ると、まず全例で出産に成功、子供の体重は当然32週前後なので低体重だが、同じ時期に出産した場合の平均体重と比べ体重が上回るケースが半数以上を占めた。また、カラムを通すことでの副作用は軽度でとどまっていた。

以上のことから、安全性だけでなく、効果もある程度期待できそうだという結論になるが、今後はコントロールを置いた治験を行う以外に、有効と判断することは出来ないだろう。しかし、Flt-1 と preeclampsia との関係が示唆されてから23年、臨床応用がいかに大変かよくわかる研究だと思う。

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