名前の通りマクロ-ファージはバクテリアだけでなく、死にかけの細胞をまるごと食べることができる。食べた後ファゴゾームと呼ばれる細胞膜に囲まれた小胞が形成され、このファゴゾームはリゾゾームと融合することで中身を分解する。この過程で、例えばガン抗原はマクロファージのクラス II 組織適合抗原と結合し、細胞膜に発現され、免疫を刺激する。ただこの方法だけでは、キラー細胞が認識するクラスI組織適合抗原+抗原ペプチドを生成するチャンスは少ない。そこで Trogocytosis と呼ばれる細胞表面をかじりとって自分の膜状に表現する方法も備えている。この場合、相手の細胞が発現するクラスI抗原+抗原ペプチドをそのまま利用することができる。
今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、紹介した2種類とは異なる新しいマクロファージの食べ方が存在することを示した研究で、4月29日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Submicrometre sampling of living cells by macrophages(マクロファージは生きた細胞からミクロン以下のサンプリングを行える)」だ。
クラゲから分離されたGFPよりはるかに明るい蛍光を発するタンパク質 ZsGreen を発現するマウスを用いて、細胞から細胞への様々な分子のやりとりを研究する中で、健康な細胞からマクロファージへ ZsGreen が移行する可能性に気づいたのがこの研究の発端になっている。
メカニズムを詳しく調べるため、ZsGreen を発現したガン細胞とマクロファージを共培養し、その後マクロファージの蛍光を調べると ZsGreen が移行しており、しかも小胞に包まれて細胞質内に散在しているのがわかる。これは Trogocytosis やファゴゾーム形成でもないと確信して、ガン細胞からマクロファージへ ZsGreen が移行する様子を観察すると、ガン細胞からマクロファージの方へ細い突起が伸びて、これが何らかの形で細胞質に取り込まれる。
これに関わる細胞表面分子やシグナル分子についても調べており、CD98 や Srcシグナルなど、阻害されると ZsGreen の取り込みが低下する分子も特定されるが、結論的には様々な分子が代償し合って働いているという結果になっている。
ついで、取り込まれた ZsGreen の入った小胞を分離し、細胞内に存在しうるどの小胞に存在するどの小胞に対応するのかについてフローサイトメーターを用いて詳しく解析している。この実験が研究のハイライトで、読んでいる方もここまでできるのかと感心する。結果は明瞭で、ZsGreen を含む小胞は若い小胞と同じ分子を発現しており、リソゾームと融合する経路を通らず、おそらくそのまま膜にリサイクルされる。
その結果、この経路で取り込まれたガン抗原はリソゾームで分解されてクラス II 抗原上に提示されることはほとんどなく、卵白アルブミンの実験系を用いると、この方法で抗原を取り込んだマクロファージはCD4T細胞はほとんど刺激できない。
一方、クラス I 抗原と卵白アルブミンペプチドはそのままリサイクルされて細胞表面に発現され、CD8T細胞を強く刺激することができる。そして、Snyx27 と呼ばれる小胞体輸送分子をノックアウトすると、ZsGreen を取り込む新しいタイプの小胞もリソゾームと融合して、キラー細胞の刺激能力が低下する。
結果は以上で、マクロファージは様々な方法で対象の細胞から分子を取り込んで、最適の免疫反応を調節していることがよくわかるおもしろい論文だ。
