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6月12日 Sirtuinの予想を超えた複雑な機能(6月10日 Nature オンライン掲載論文)

2026年6月12日
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我々は7種類のSirtuin遺伝子を持っており、NAD依存的に活性化される点では共通だが、機能や局在はそれぞれ異なっている。ヒストン脱アセチル化酵素活性を持つ クラスI 分子以外にも、様々な機能が特定されている。いずれもDNA保護、ミトコンドリアなど代謝の改善に関わることから、アンチエージングの標的分子として一般の人の興味を引くようになっている。

ただ、今日紹介するハーバード大学からの論文は、Sirtuin が NAD依存的ヒストン脱アセチル化酵素と言った理解をはるかに超えて、生命過程に複雑に関わっていることを示す研究で、6月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「SIRT7 regulates dosage compensation and safeguards the female X chromosomem(SIRT7は女性のX染色体の発現量調節と保護に関わっている)」だ。

全く知らなかったが、Sirtuin (Sirt) 遺伝子ノックアウトマウスの解析から、多くの Sirt で、その欠損の表れに大きな性差が見られることが知られていたようだ。この研究では、ヒストン脱アセチル化酵素活性(HDAC活性)を持ち、ノックアウトでメスの寿命がオスに比べてはっきり短い Sirt7 について、性差が生まれる原因を探っている。

HDACなので Sirt7 の結合しているゲノム領域を、胎児線維芽細胞の免疫沈降で調べると、なんと7割の Sirt7 はX染色体に結合している。一方、オスではY染色体に強く結合している。ただ、Y染色体自体は小さく一般機能への関与は少ないため、X染色体に焦点を当てて研究を進めている。

X 染色体は活性化 X (Xa) と不活化 X (Xi) 発生途中で別れるが、ES細胞分化システムを用いて Sirt7ノックアウトによるX染色体遺伝子の発現を見ると、Xiではより効率よく遺伝子発現が抑えられ、Xaでは遺伝子発現が全体的に上昇するという不思議な現象を示すことがわかった。このメカニズムをヒストンの H3K27me 及び Sirt7 が関わるH3K36ac の分布を指標に調べた結果、Xi では Sirt7ノックアウトで X染色体不活化の鍵分子 Xist の発現が上昇し、これが不活化を促進すること、そして EZH2 のリン酸化を促進することでポリコム複合体の Xi へのリクルートを促進し、遺伝子発現を抑制することをまず明らかにしている。

一方、Sirt7 は染色体のトポロジーを守る働きがあり、Sirt7ノックアウトマウスでは Xi 及び Xa で大きな折りたたみは正常と変わりないが、短い距離のゲノム同士の相互関係がずれ、X染色体全体が緩むことがわかった。このトポロジーのずれの結果、Xaでの遺伝子の発現全体が上昇する。

Xaで特に問題になるのは、Xaで染色体の安定性が損なわれ、DNA損傷が起こりやすくなることで、損傷部位にはSirt7により調節されるH3K36acが通常より強く濃縮していることから、これがSirt7欠損の結果である事がわかる。また同じH3K36ac濃縮により、Xa上の遺伝子の発現量調節が狂って、Xa上の遺伝子の過剰発現が起こる。

以上、おそらくXi自体の変化は Sirt7ノックアウトマウスへの影響は少ないが、Xaでは染色体が不安定化し、クロマチンの緩みと 3eK36ac の抑制が効かなくなる遺伝子発現調節が狂う結果、メス特異的に老化が早まると考えられる。一方、Xiでは H3K36ac の作用は Xist にとどまるため、Xist が余分に発現しても、不活化の効率は上がっても、遺伝子の異常発現は起こらない。

X染色体の不活化などについての知識がないと、理解しづらいとは思うが、他のSirtノックアウトの形質にも性差が大きく見られるとすると、Sirtを本当に理解するためには、これらの性差の進化起原を明らかにすることが重要ではないだろうか。

  1. okazaki yoshihisa より:

    Xaでは染色体が不安定化し、クロマチンの緩みと3eK36acの抑制が効かなくなる遺伝子発現調節が狂う結果、メス特異的に老化が早まる
    Imp:
    老化しやすさにも性差があるのか??
    一般的にメスの方が長寿なんですが。。。

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