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4月22日 抗体を用いた分子間相互作用とRNA発現を同時に調べる空間トランスクリプトーム法の開発(7月17日号 Cell オンライン掲載論文)

2026年7月22日
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組織標本上で何千ものRNAやタンパク質の発現を調べたり、あるいはトランスクリプトームを調べたりできる、空間トランスクリプトーム法についてはこのブログでも何度も紹介し、おそらく実験室でも高額ではあっても利用可能なテクノロジーになってきている。そして、次から次へとより困難な課題にチャレンジする研究も生まれている。

今日紹介するシカゴ大学からの論文もこのようなチャレンジの一つで、複数の抗体による染色とVisiumトランスクリプトームを組み合わせて、分子間、あるいは細胞間相互作用が起こっている場所でのトランスクリプトームの変化の解析を可能にする研究で、7月17日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Spatial proximity sequencing maps developmental dynamics in the germinal center(トランスクリプトームの空間的近接性は胚中心の発生動態を明らかにする)」だ。

胚中心はリンパ組織内で免疫反応に関わる構造で、抗原刺激により現れ、抗体産生とその成熟に必要なリンパ球や樹状細胞の相互作用が進むダイナミックな組織だ。この研究の目的は、複数の抗体を用いて分子間あるいは細胞間の相互作用を特定した後、そこで起こる遺伝子発現変化を解析する方法の開発なので、胚中心は方法を検証するのに格好の対象と言える。

さて方法について詳しめに解説する。この方法の基盤は 10XGenomics 社の Visium と呼ばれる空間トランスクリプトーム法で、2ミクロン平方のスポットに異なるバーコードを持つ polyT を結合させ、その上に貼り付けた細胞に発現する mRNA をキャプチャーし、そのあとスライドグラス上の全ての RNA をまとめてシークエンスしたあと、バーコードに従って発現していた RNA の空間配置を再構成する方法だ。

この研究で開発された Sprox-seq と呼ぶ方法は、これに32種類の抗体を用いる染色を合体させる方法だ。重要なのは抗体を組み合わせるだけでなく、分子と分子が近接して相互作用している現場を特定することを目的としている点だ。事実、抗体を Visium に組み合わせるだけなら、抗体に PolyA と特定する配列を結合させておけば、発現 RNA とともにどの抗体が結合していたかを、同じ配列解析から抽出することができる。一般に行われるかどうかはわからないが、Visium 自体は RNA だけでなく、原理的には抗体によるタンパク質の同定も同時に出来る立て付けになっている。

例えば接着分子同士の結合を考えると、2種類の抗体が同じスポットに現れれば可能性は高いと推察できるが、Visium の解像度では本当に近接していたのかはわからない。そこでこの研究では、Aと言う分子に対する抗体に一つの PCR シグナルとバーコード、そして DNA 同士のリゲーション部位を結合させ、Aと反応するB分子に同じくリゲーション部位、バーコード、そして Visium にキャプチャーされるための polyA を結合させ、両方の抗体が近接する場所だけ抗体の情報がスポットに残るようにしています(この文章を読ませて Chat に書かせた図を掲載しておきます)。

これによって、例えば接着分子が結合している部位を空間トランスクリプトーム上にマップすることができる。

様々なテクニカルな条件を検討した後、胚中心で相互作用している分子の局在や、結合の強さを調べているが詳細は省く。代わりに一つだけ例として CD29 と VCAM1 、インテグリンα4 の接着分子同士の結合を検討し、インテグリン α4/VCAM1 及び CD29/VCAM1 の結合の局在が異なることを示している。

方法を説明したかったので、胚中心のバイオロジーについてはほとんど割愛してしまったが、発生学、免疫学、腫瘍学など様々な分野で役立つのではないだろうか。しかし、空間トランスクリプトーム解析法の進展は著しい。

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