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9月17日 不思議なワクチン効果についての2編の論文(9月10日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2026年9月17日
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帯状疱疹を予防するワクチンがアルツハイマー病の発症を予防するという報告は大きな話題になったが、同じようにワクチン本来の機能とは無関係な病気とワクチンの相関を調べる研究が増えてきている気がする。そこで今日は、最近目にした2報のワクチン論文を紹介することにする。

最初は8月26日 Nature Medicine にオンライン掲載された、帯状疱疹に対する生ワクチンと、ウイルス表面タンパク質を組み換え技術で作成した shingrix ワクチンの心臓病予防効果を比較したオックスフォード大学からの研究で、8月24日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Recombinant shingles vaccination and the risk of cardiovascular events(組み換え shingles ワクチンと心血管イベントリスク)」だ。

ワクチンが本来の予防対象疾患とは無関係な病気に効果があることを調べることは簡単でない。と言うのも、ワクチン摂取を受けようと思う人は当然健康に気を配っていると考えられ、接種を受けない人と単純に比較することは難しいことが常に指摘されてきた。これに対し、この論文は帯状疱疹の生ワクチンと shingrix を比較することで、ワクチン肯定派と否定派の比較にまつわる問題を回避している。

これが可能になった理由は、英国の帯状疱疹ワクチンは国により提供されており、2017年に生ワクチンから shingrix に変換されたことで、帯状疱疹ワクチンを受けたと登録されている全員が、2017年以前は生ワクチン、それ以降は shingrix を摂取されている。この自然の実験を利用して、生ワクチンと shingrix で心不全、虚血性心疾患、そして脳卒中の発症率を7年間追跡している。

結果は、どちらの心疾患もワクチン接種後の最初の3.5年間は発症リスクがオッズ比で0.85程度まで低下している。一方、脳卒中ではそのような傾向は見られない。また、ワクチン接種後3.5年以上経過すると、ワクチンの効果は見られなくなることがわかった。

結果は以上で、3万人以上の調査から帯状疱疹の予防効果が高い shingrix は生ワクチンと比べて、帯状疱疹どころか虚血性心臓血管疾患の予防効果まであること、またこの効果はワクチン接種後3年程度しか続かないことがわかった。

次のフランス・ソルボンヌ大学からの論文はコロナ禍の最中免疫チェックポイント治療 (ICI) を受けたガン患者さんが Covid-19 ワクチンを受けた時、原因を問わない死亡率や、ガンによる死亡率に対する影響を調べた研究で、9月10日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「COVID-19 vaccination around immune checkpoint inhibitor start and survival in a nationwide cohort of patients with cancer(免疫チェックポイント治療前後の Covid-19 ワクチンのガン患者さんの生存に関する影響)」だ。

全てフランス国立医療システムデータベースの記録からデータを抜き出して調べた研究で、まず ICI を受けたガン患者さん95000人の中から、ICI 治療開始100日前後に Covid-19 ワクチンを接種された人を選び出し、2年間原因を問わない死亡率と、直接ガンに起因する死亡率を算定している。

まず死亡率だが、ICI の適応になるガン患者さんなので、2年目で半数が亡くなっている。ただ、原因を問わない死亡率で見ると、追跡の最初から最後までワクチン接種を受けた人の方が10%程度だが死亡率が低い。当然 Covid-19 の影響もあるので、Covid-19 感染とは関係ない死亡率を抜き出して調べても、10%程度の死亡率の低下を認めることができる。また、ガンが直接原因と考えられる死亡率もほんの少しだが低下している。

ICI 開始の前でも後でも効果が見られるが、ワクチン接種と ICI 開始の時期が離れれば離れるほど、影響は低下する。即ち、クチンを接種して2-3ヶ月は死亡率を低下させる効果がある。

同じデータベースから肺炎球菌ワクチンや、他のワクチンについても同じように調べているが、他のワクチンでも同じような傾向が見られることから、抗原特異的な反応ではないことがわかる。

以上が結果で、最近の免疫性の強いワクチンを注射すると、ガンの免疫も一定程度高められるという結果だ。逆に、mRNA ワクチン接種がガン患者さんに悪影響があるという可能性は統計的に払拭できている点も重要だと思う。

両方の論文とも、メカニズムはわかっていない。Shingrix とアルツハイマー病だとまだウイルス感染を防ぐと言うメカニズムも考えられるが、今回相関が調べられた疾患は感染症とは無関係なので、おそらくワクチンのアジュバント効果などが関わっていると思われるが、そのためには免疫状態を丹念に調べる必要がある。重要なのはワクチンの効果など、国の健康データベースが整備されておれば統計的な調査を行える点で、ワクチン賛成、反対と対立する前に、どちらも科学を重視するならデータベースの前に座ってデータを見ながら話し合えば済むことだと思う。ただ、科学自体を否定するようなトランプ政権には何を提案しても無駄だろう。

  1. okazaki yoshihisa より:

    ICI 開始の前でも後でも効果が見られるが、ワクチン接種と ICI 開始の時期が離れれば離れるほど、影響は低下する。
    即ち、ワクチンを接種して2-3ヶ月は死亡率を低下させる効果がある。
    Imp:
    ワクチンとICI効果の関係は大変興味深いです。
    勘ですが、リンパ節が大きく関与していると思っています。
    リンパ節標的療法!

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