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10月30日 電気で活性化できる触媒を用いて糖尿病を治療する(10月22日 Science 掲載論文)

2026年10月30日
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手術後4ヶ月が過ぎた。手術から放射線治療を続ける間も、元々治療していた糖尿病治療は続けているが、驚いたことに普通に食べ、同じ薬を服用しているのに血糖が下がり、HbA1cも手術前よりずっと良くなった。代謝は簡単には理解できないのを実感する。現在服用しているのは、SGLT2阻害剤とDPP-4阻害剤だが、SGLT2阻害剤は腎臓尿細管でのグルコース取り込みを阻害して、一日に100g近いグルコースを捨てて血糖を維持する。グルコースを捨てるというのは極めておもしろい発想なので、Youtubeでも紹介した。それまで高血糖には、インシュリン感受性を高める方法と、インシュリン分泌を高める方法が使われてきたのだが、そこにグルコースを捨てるという方法が加わった。

今日紹介するスイスチューリッヒ工科大学バーゼル校からの論文は、このグルコースを捨てるという発想を、電気で活性化できるグルコース酸化触媒で実現しようとしたおもしろい研究で、10月22日 Science に掲載された。タイトルは「Wireless electrocatalytic closed-loop system for drug-free management of diabesity(無線で駆動する電気触媒を用いた閉鎖システムで薬剤を全く使わない糖尿病管理を実現する)」だ。

この研究が目指したのは、体内にグルコースを酸化する触媒を設置して、グルコースを腎臓から排泄できるグルコン酸に変換し、腎臓から排泄させるという全く生物的薬剤を使わない画期的方法だ。腎臓の透析も同じアイデアだが、血管を装置につなぐのではなく、装置を皮下に設置して持続的に触媒を働かせてグルコースを変換すると言うアイデアだ。

この論文でも紹介されているが、酵素なしでグルコースを酸化する方法は、グルコースを用いて発電する方法として酸化銅を触媒とする方法が開発されていたようだ。ただ、この研究では触媒活性を全く調節できない。この研究では金の粒子に白金を重ねたナノ粒子をグラファイトに塗布した触媒を用いている。この触媒はそのままでは活性がないが、0.7V近い電気で刺激すると金属表面にグルコースを吸着し酸化する触媒だ。従って、体内のグルコース濃度と電気刺激をリンクさせれば、グルコースが上昇したときだけ酸化することができる。

この研究ではこうして作成した電気触媒がグルコースを酸化することを確認した後、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロース他、様々な分子や薬剤について調べて、ほとんど酸化活性がなくグルコース特異的であることを示している。酵素のように複雑なポケットを持たない触媒でこのような特異性が生まれるのは驚きだが、この組み合わせを発見したというのはもっと驚きだ。ただ、この触媒の開発までの説明はほとんどされていない。

次はこの装置が生体内で働くかどうかで、電気装置はFDA認可の埋め込みケースに入れ、これにポリセルローズをアルギン酸コーティングした小分子が浸透する膜で出来た袋に入れた触媒とつないで、電気的に触媒活性を調節できるようにして、皮下に埋め込んでいる。db/dbと呼ばれるレプチン欠損により2型糖尿病を発症するマウスに装置を埋め込んでいるが、腎透析のように血管をつなぐわけではなく、そのまま拡散でグルコースを局所的に処理する仕組みだ。しかし、皮下で処理するだけで身体全体のグルコース濃度を調節できるのか?

案ずるより産むが易しで、db/dbマウスに設置して電気刺激すると、1時間で血中グルコースが正常化する。さらに、この装置を市販のグルコースセンサーと組み合わせ、グルコース濃度が閾値を超えたときだけ無線で電気刺激が起こるようにした自動調節装置を作成し、2週間にわたってdb/dbマウスの血中グルコースを正常範囲に維持することが可能であることを示している。

db/dbマウスではインシュリンは分泌できるので、インシュリン作用により脂肪がエネルギー産生に使われるようになり、ケトン体などが上昇する。ただ、ケトアシドーシスなどは起こっていないように見える。また、自動調節ではないが6週間この装置でグルコースを下げたdb/dbマウスでは、同じように脂肪をエネルギー源にしている代謝に変化していることがわかるが、問題になるようなケトアシドーシスは起こらない。

以上が結果で、インシュリン分泌はそのままで、グルコースだけを低下させる画期的方法が開発されたことになる。では人間にも利用できるのか?5リットルのグルコース液を十分処理できるサイズは人間に設置可能としているが、サイズのハードルは高いと思う。しかし、SGLT2阻害剤と異なり、血中グルコースに合わせてグルコースを除去できる方法としては画期的で、インシュリンは自然分泌なので低血糖発作の危険性もない。一方、ケトン体は作り続けられることになるので、これが許容されるかはわからない。しかし、糖代謝という生物代謝の核を、全く人工的な方法で変化させられることだけでもおもしろい。おそらくマウスを用いた新しい実験方法として、グルコースだけを調節できる新しい研究に使える気がする。

  1. okazaki yoshihisa より:

    体内にグルコースを酸化する触媒を設置して、グルコースを腎臓から排泄できるグルコン酸に変換し、腎臓から排泄させるという、全く生物的薬剤を使わない画期的方法!
    Imp:
    ナノメディスンで20世紀までアンタッチアブルだった領域に手が届き始めた?!

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