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4月15日:海を漂うガン細胞は故郷の夢をみるか?(4月9日号Cell誌掲載論文)

2015年4月15日
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医学から離れて広く生物を見始めると、生命の営みの多様性に今更ながら驚く。今日紹介するコロンビア大学の論文は、アメリカ東部北部の海岸で猛威をふるっているオオノガイに発生する白血病についての研究で、4月9日のCell誌に掲載された。タイトルは「Horizontal transmission of clonal cancer cells causes leukemia in soft-shell clams (ガン細胞の水平伝搬によりオオノガイの白血病が引き起こされる)」だ。白血病はオオノガイだけでなく、ムール貝や牡蠣にも見られることは昔から知られていたようだ。さてオオノガイだが、これまでの研究で白血病の原因がSteamerと呼ばれるレトロトランスポゾンの仕業であることが突き止められていた。正常の細胞のゲノムにも2−10個のレトロトランスポゾンが存在するが、白血病になるとその数が150−300に増加する。この研究は現在アメリカ東部のニューヨークからカナダまで白血病が蔓延しているオオノガイを集め、その白血病の起源を調べている。最初はレトロトランスポゾンが飛び込んだ場所から白血病の原因を調べようとしたのだろう。ところが、様々な場所から得られた貝を調べるうちに驚くべきことに気づく。すなわち、白血病細胞は、それにかかった貝の細胞とは全く異なる起源の細胞で、しかも異なる広い場所から採取したのに白血病は同じ起源を共有していることに気づいた。この研究で行われたのは、様々な方法に基づく細胞の起源の特定で、北東部海岸に蔓延する白血病が同じ細胞を起源とすることを確認した。すなわち、広い範囲に蔓延する白血病は、一個のオオノガイの一個の細胞に発生したクローン細胞が個体から離れ、細胞自身が海を漂いながら他の貝に伝搬し、白血病を引き起こし、次々と「ハマグリ算?」で拡大していることが証明された。話はこれだけで、どのように伝搬するのかなどはこれからの研究になるだろう。脊椎動物になると、組織適合抗原が存在するため、白血病細胞が他の個体で増えることはないが、よく考えると組織抗原のプロトタイプはホヤからしかなく、軟体動物ではこのような伝搬が起こっても不思議ではない。実際ディスカッションで、このような伝搬形式を防ぐために組織抗原が進化したのではないかまで議論している。しかし、白血病細胞が次のホストを探して海を漂っているなど、結構ロマンチックに感じるのは私が長く血液について研究してきたからだろう。面白い話だった。

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