読み始めて気がつくのは、なぜ人間が音楽を理解できるのか、科学的に調べるのは大変だということだ。この研究では、音楽のピッチのズレを感じる能力に焦点を当てて研究している。合奏中に音の外れた楽器や声を聞き分けられる能力といっていい。かくいう私も、このズレはよくわかる方だが、この体験を波形と言葉で表現している科学論文になると、どこまで理解できたか少しおぼつかない。
ただこのピッチに関して、私たち人間が持つ感覚の特徴は次の3つにまとめられるようだ。
1) 低い音ほどピッチの変化を感じやすい、
2) ハーモニーが乱れている方がピッチの変化を感じやすい、
3) 高い音でピッチがわかりにくい時、音のリズムがはっきりしている方が変化を感じやすい。
これは論文を読んでの私の理解で、正しいかどうか自信がないが、自分の体験を振り返って考えてみると、確かにそうかなと思う。
さて、この感覚をマーモセットで確かめるのは大変だ。実際にはピッチのズレを感じたらレバーを押すように訓練したマーモセットで、特定の変化に様々な音をかぶせてテストしている。結果は予想通り、マーモセットもこの3つの特徴を持っているという結論だ。サルも音楽がわかる。めでたしめでたしの結論だ。 ついでなら音痴の人とサルの比較成績も知りたい気がする。
音楽を科学にするのは難しい。しかし、関係性の認識を研究するのに音楽ほど面白い対象はない。実際、初めて聞いた音楽でも、作曲家がわざと挿入した不協和な音を認識できる。逆に作曲家は、最初のフレーズを聞いただけで私たちの頭に生まれる幻想に挑戦しているのだ。このやりとりが何を基礎に行われているのか、興味は尽きない。
申年も、時間が許す限り多くの音楽を聞いて暮らそうと、年頭に当たって決意を新たにした。(横でカミさんが遊びたいだけと笑っている)。