今日紹介する英国King’s Collegeからの論文は、インフラマゾームカスケードがさらに複雑な制御を受ける可能性を示した論文で6月17日号のScienceに掲載された。タイトルは「T helper 1 immunity requires complement-driven NLRP3 inflammasome activity in CD4+ T cells (1型ヘルパーT細胞免疫はCD4陽性T細胞内で補体により活性化されるNLRP3インフラマゾームの活性を必要とする)」だ。
このグループはT細胞の活性化に関わる補体の役割を研究している様だ。T細胞と補体との関係ではC3に結合して補体カスケードの活性化を抑えるとともに、T細胞内のシグナルに関わるCD46がよく知られているが、この研究ではなんと、細胞内のC5がヘルパー機能にどう関わっているかを研究している。
最近補体がシナプスの剪定に関わるなど、思いもかけない機能が明らかになっているが、細胞内で働いているという話は初耳だ。
この論文のハイライトは、
1) 1型ヘルパーT細胞のCD3とCD46を同時に刺激すると、細胞内でC5が産生されること
2) ヘルパーT細胞ではC5受容体のC5aR2は細胞膜、C5aR1は細胞内で発現すること、
3) C5aR1とC5の結合はミトコンドリアROSを介してLRP3分子複合体形成を活性化して、インフラマゾーム形成を促進すること
を発見したことだ。残りのデータは、この発見の意味を問うため、阻害剤やノックアウトマウスを使った詳細な炎症反応の解析で、C5の研究とインフラマゾームの研究が入り組んでしまってメッセージがわかりにくい。
このシナリオはいいが、少し気になるのが細胞外のC5aR2の役割で、論文ではたしかにC5aR1とC5を奪い合って、C5aR1機能を阻害するとともに、直接インフラマゾームの活性化を抑制することが示されている。とすると、C5の刺激が複雑な回路を形成してしまうことになる。実験的に言えば、最終結果が何であってもC5誘導で説明ができてしまうのはスフェアではない様に思える。 とはいえ、C5が細胞内で働いているということ、インフラマゾームの活性化が、自然免疫だけでなくT細胞の抗原刺激でも起こることを示したことは、LRP3遺伝子変異による疾患の深い理解に貢献するだろう。