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11月24日:教科書は書き換えられる(11月18日Science掲載論文)

2016年11月24日
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   まず次のウィキペディア収録図を見てもらおう(https://en.wikipedia.org/wiki/Autonomic_nervous_system#/media/File:The_Autonomic_Nervous_System.jpg)。
  これは医学部で誰もが習う自律神経の解剖と生理をまとめた図だが、自律神経には交感神経系と、副交感神経系が存在し、交感神経系は胸部から腰部の脊髄から、副交感神経系は脳神経及び、仙骨部の脊髄から投射していることが示されている。1886年、Gaskellらが報告し、1921年有名なラングレーの教科書に自律神経系の構造として記載されてから今まで疑われることなく、信じられてきたドグマだった。
   もちろん疑われることがなかった十分な理由はあった。自律神経系は、交感神経系と副交感神経が拮抗して内臓の活動を調節しているとされ、例えば瞳孔の散大や収縮はこのドグマに基づいて医療が行われてきた。脳神経由来の副交感神経が来ていない膀胱や外性器などは、腰部からの交感神経に加えてどこからか副交感神経が必要で、仙骨神経は副交感系だとする方が理にかなっていた。
   しかし100年以上信じられてきても、ドグマは書き換えられるためにある。今日紹介するフランス・高等師範学校からの論文は仙骨神経は交感神経であることを示した論文で11月18日号のScienceに掲載された。タイトルは「The sacral autonomic outflow is sympathetic(仙骨からの自律神経投射は交感神経だ)」。
   おそらくこのグループは神経発生を研究するうちに、仙骨からの神経発生過程で副交感神経特異的な分子マーカーが染まらないことに気づいたのだろう。研究では、副交感神経の代表、迷走神経発生過程での分子発現を、胸部交感神経、及び仙骨からの自律神経発生と比較し、仙骨からの自律神経系発生過程が、副交感神経系発生とは全く異なり、逆に交感神経の発生過程で発現する分子が出ていることを明らかにしている。
   はっきり言うと実験はこれだけだが、この分子マーカー発現に基づき、仙骨神経は、骨盤神経節に集まり、腰部からの交感神経とともに、直腸、膀胱、外性器を支配すると結論している。たしかに解剖学的に見ると、仙骨神経と脳神経が同じ副交感系を作ると考えるより、副交感系は脳神経、それ以降は全て交感系と考える方がすっきりする。しかし、では直腸、膀胱、ペニスなどの外性器の自律神経支配は説明がつくのかと心配になる。特に排便、排尿などの調節は重要だ。
   これについても著者らは明快で、これまでの生理学的研究は先入観に基づくもので、これらの臓器は交感神経だけで支配されていると考えても、生理学的に説明がつくと主張している。
   これほど明確なパラダイムシフトが提案されたからといって、この考えがドグマになるためには様々な検証が必要だ。しかし、排便、排尿だけでなく、性機能など人間にとって重要な生理機能がもう一度検討され直し、新しい治療法の開発に繋がる確率は高い。
   しかし驚いた。

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