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12月4日:トランプ政権の新しい保健福祉長官(11月26日Nature発表記事)

2016年12月4日
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    トランプ政権の閣僚人事が進んでいる。政権の核になる国務長官人事は難航しているようだが、それでもトランプ政権で何が起こるのか徐々に見えてきたように思う。
   日本の厚生労働省に当たる保健福祉長官には、ジョージア州下院議員の整形外科医トム・プライスが選ばれた。もちろん議会承認が必要だが、否決されることはないだろう。我が国メディアが米国の保健福祉長官人事をわざわざ報告することはまれだが(ちなみにオバマ政権時の、カソリック信者でありながら人工中絶は女性の権利を守ると言い切ったセベリウスについて報道されたことはあっただろうか?)、プライス人事については各紙が報道した。これは、彼がオバマケア反対の急先鋒で、アメリカを再度5000万人の未保険者を抱える国に戻すことがトランプを支えた米国の白人低所得者層にどう受け入れらるのか、各紙も政治的に重要と考えたからだと思う。
   保健福祉局はNIHなどの医学研究予算を決める立場にもある。そのため、米国の生命科学者にとってはプライス長官が生命科学研究予算にどのような態度で臨むのか当然心配になる。心配と書いたのは、オバマ政権がゲノム、ガン、脳など生命科学研究に積極的だった一方、下院議員としてのプライスは、これらの予算拡大に一貫して反対してきたからだ。
   11月26日付のNatureにはSara Reardonさんが早速「Trump’s pick for US health secretary has pushed to cut science spending(トランプが選んだ保健福祉長官は科学予算削減を推進してきた)」という記事を書いて、この長官について取材している。
   この記事の中で紹介された、プライスのオバマが計画した750億円に上る対ガン研究大型予算に対するコメント、「我々はガン研究に対する予算を増額することの重要性はよく認識している。しかし問題は、要求が予算の増額だけを求め、決して他の分野をカットしてガン研究への増額分を埋め合わそうとしない点だ。実際はこのことこそやるべきなのだ」が、彼の方向性を最も語っているようだ。要するに、増額ではなく、予算の対象を仕分けることが重要だというコメントだ。
   この記事では、彼がカットしてきた計画リストが示されている。
1) FDA の改革を目的とする予算、
2) NIHの基本予算案(9000億)
3) 755億円の対ガン予算
4) 米国疾患予防管理センターの公衆衛生プログラム(1−2000億円)
確かに筋金入りだ。これに加えて、彼はES細胞樹立や、中絶胎児由来組織の研究利用にも強く反対しており、研究倫理面でもブッシュ時代に逆戻りする心配がある。
  とはいえ、研究側も手をこまねいて待っているわけにはいかない。おそらくプライスを説得しようと試みるだろう。最近フランシス・コリンズとウイリアム・ライリーの名前でNIHが発表した、新しい行動科学、社会科学を確立するための深い洞察に基づくプロジェクトもその一つではないだろうか。
  ただ、いずれにせよ米国の生命科学者は冬の時代の到来を覚悟しているようだ。

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