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4月11日:C9ORF72遺伝子変異によるALS治療のための分子マーカー(3月29日号Science Translational Medicine掲載論文)

2017年4月11日
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    運動神経が進行性に失われるALSは現在もなお治療法がない難病だが、一部の患者さんに病気の引き金になる遺伝子変異が見つかってきたおかげで、特殊なケースについては少しづつ治療戦略を構想することができるようになってきた。中でも最も期待されているのがC9ORF72遺伝子内のGGGGCCが繰り返す配列が、正常では30回以下で止まっているのに、何百、何千にも増えることで発症するALSだ。これは家族性に遺伝することもあるし、また遺伝性の認められない個発性のALSでも見られる変異で、順天堂大学の富山さんの論文によると、家族性ALSの21−57%、個発性の3−21%に達する。従って、早期診断と治療法が発見されると、かなりの数のALSの患者さんを救うことができる。
   今日紹介する米国メイヨークリニックを中心とするグループからの論文はこのタイプのALSの早期診断と遺伝子治療モニターのための分子マーカー開発についての共同研究で3月29日号のScience Translational Researchに掲載された。タイトルは「Poly(GP) proteins are useful pharmacodynamic marker for C90RF72-associated amyotrophic lateral scleraosis (ポリGPタンパク質はC9ORF72の関わるALSの薬理的分子マーカーとして有用)」だ。
   GGGGCCの繰り返し配列が何百何千もC9ORF72遺伝子に存在すると、小胞体輸送に関わると考えられているC9ORF72分子の機能が失われるとともに、異所的な翻訳開始点からグリシン・プロリン、アルギニン・グリシン、あるいはグリシン・アラニンの配列が繰り返すだけのタンパク質が合成される。このポリペプチドが、C9ORF72遺伝子から転写された長いRNAを核として集まることで、細胞内にペプチドが沈殿し、細胞を障害することが示唆されている。したがって、早期に診断してこのポリペプチドの合成を止めることで、発症や進行を抑制できる可能性がでてきた。
   この研究では、可能性のある3種類のポリペプチドのうち、患者さんの脳脊髄液中に存在するグリシン、プロリンが繰り返すポリペプチドが、患者さんを発病前から発見し、モニターする分子マーカーとして利用できることをまず示している。病気や、症状のタイプとは強い相関はないが、発病した患者さんでは安定的に上昇が見られるため、病気が進行していることをモニターするためにはうってつけの検査になる。
   次に細胞株や患者さん由来のiPSから作成した神経細胞を標的に、アンチセンスRNA処理を行うと、ポリGPが減少する。すなわち、アンチセンス治療の効果のモニターに使える可能性がある。最後に、マウスモデルで1回アンチセンスRNAを脳内に注射すると、脳脊髄液中のポリGPが減少し、脳内のタンパク沈殿が減少することを示している。
   この結果は、前臨床動物モデルで、病気を早期発見し、タンパク質の沈殿を防ぐことができ、その結果をポリGPでモニターできることを明らかにした。患者さんにとってはまだまだもどかしいとは思うが、少しずつ治療の光も見えてきた気がする。
  1. Okazaki Yoshihisa より:

    ポリGP:アンチセンス治療の効果のモニターに使える可能性がある。

    ALSの新規治療法確率に向けて前進。

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