私たちの細胞一つ一つが日周期を持っており、概日周期と呼ばれている。日本はこの分野もいい研究者が多い。京大の薬学部の岡村さんもその一人で、つい最近もScienceに論文を発表し、今回はCellに論文を発表している事は、今乗っていると言っていいだろう。ただ、多分プレス発表と言うのをしないのだろう。日本のマスメディアが、ほとんどプレス発表に依存している事から考えると、岡村さんの仕事が新聞に掲載される事はないだろう。しかし、今回の研究は新しい岡村さん独自のストーリーで面白い。
概日時計が働くと言う事は、多くの遺伝子の発現が時間とともに増減する事を意味する。これまでこの調節には、もっぱら染色体上での遺伝子の発現の調節によると考えられて来た。事実、時計遺伝子と呼ばれるいくつかのセットのマスター遺伝子が多くの遺伝子を支配する構造が知られている。しかし、詳しく見てみると、この支配を受けている遺伝子の数はそれほど多い訳ではなく、実際には他のメカニズムが存在する事が想像されていた。この問題の一端を解いたのが今回の仕事ではまず、RNAのメチル化を阻害すると、概日リズムが遅れる事を発見した。この原因を調べて、この処理がMettl3と呼ばれる酵素によるメッセンジャーRNAメチル化を阻害し、この結果、RNAが処理され、核外に移行し、一定の期間細胞質にとどまり、蛋白へと翻訳される一連の過程にかかる時間が延びて概日リズムを壊れる事を示した。言い換えると、時計分子をコードするRNAが核内でメチル化される事により、RNA全体の代謝が調節される事で概日リズムの間隔が維持されている事を示したものだ。みなが同じスキームの中で時計を考えている中で、岡村さん達はしっかりと独自の道を切り開いている。
RNAメチル化による細胞時計の制御(11月7日Cell誌掲載)。
2013年11月10日