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8月13日:ヒストンの進化(8月11日号Science掲載論文)

2017年8月13日
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生物の進化を約40億年と考えると、原核生物や古細菌から、核を持った真核生物が生まれるまでにその半分が費やされている。細胞の構成は真核生物と他とでは大きく異なり、核が存在するだけでなく、細胞骨格、細胞小器官、有糸分裂などに必要な様々なメカニズムが進化している。情報を担うDNAも核内に収まるというだけでなく、最初環状だったDNAは一本の2重螺旋になり、ヒストンによりコンパクトに折りたたまれ、染色体を作る。ここで活躍するのが様々なヒストンで、複雑な染色体構造を維持しつつ、転写を調節する。

もちろんこれだけ様々なメカニズムが、一度に登場できるはずはなく、ヒストン、アクチン、チュブリンなど基本となる分子の先祖は全て原核生物や古細菌に見つけることができる。ただ、私が知る限り、この先祖型分子の機能を詳しく調べた研究はそう多くない。

今日紹介するコロラド大学からの論文は、古細菌に存在するヒストンの先祖分子を構造的、機能的に調べた研究で8月11日号のScienceに掲載された。タイトルは「Structure of histone-based chromatin in Archea(古細菌のヒストンを基盤とするクロマチンの構造)」だ。

真核生物では多様化したヒストンが転写や複製のダイナミズムを損なうことなく染色体構造を形成するために働いている。特に、ヌクレオソーム構造を支え、転写を調整するヒストンの基本構造はH2A,H2B,H3,H4の四量体からできている。一方ヒストンの先祖分子を持つ古細菌では、DNAは環状のままで、異なる古細菌から何百種ものヒストンが見つかっているが、一つの細胞内では同じヒストンの2量体が基本ユニットであることが知られていた。

この研究ではまずDNAと結合したヒストンの2量体を結晶化し、詳しい構造解析を行い、真核細胞のヒストン4量体構造と比べている。期待通り、DNAが巻きつくための構造はよく似ており、2量体に約90bpのDNAが巻きついている。また、5’端の飛び出しを使って、一つのユニットが繰り返すポリマーを形成することができ、これにより長いDNAと結合することができている。さらに、真核生物のヒストンと同じように、DNase処理で、DNAの分解を防ぎ、30bpの倍数のラダーを形成する。この意味でも、真核細胞と機能的に似ている。

こうして明らかにした構造解析に基づき、ヒストン2量体のポリマー形成を阻害する突然変異を古細菌で導入し、硫黄が存在しない培地に移した時、代謝がリプログラムされ増殖がリスタートする系を用いて機能的変化を調べている。結果だが、様々な突然変異体を作っても、硫黄なしの培地で古細菌が死滅することはなく、硫黄非存在培地に移すとリプログラムが起こり増殖するが、スタートまでの時間、増殖速度は低下している。すなわち、明らかに細胞活性に、ヒストン2量体がポリマーを作ることが重要だ。さらに、硫黄非存培地に移した時に必要な分子の転写を調べると、ヒストンの突然変異体では低下しており、またDNaseによる分解で、長いDNAはプロテクトできない。

以上のことは、私たちが真核生物のヒストンに見る基本機能は古細菌にほぼ揃っていることがわかる。ただ、古細菌の場合は特殊な構造単位を作らず、そのままDNAに結合して、転写などの活動をスムースにしている役割があるようだ。

私が気づかなかっただけだと思うが、ここまでヒストンの機能進化研究が進んでいるのに驚いた。染色体の進化研究の基盤が十分揃っているように思う。最近、ヒストンテールを持つヒストンまで古細菌で見つかっているようで、面白いシナリオが続々生まれる予感がする。

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