今日紹介するカリフォルニア大学サンディエゴ校からの論文はGMO開発後急速に使用が拡大した除草剤がカリフォルニアのホワイトカラーに蓄積し続けていることを明らかにした研究で10月24日号の米国医師会雑誌に掲載された。タイトルは「Excretion of herbicide Glyphosate in older adults between 1993 and 2016(1993年から2016年の間の高齢者でのグリフォサートの分泌)」
グリフォサートは米国の農業コンツエェルン・モンサント社により開発された最も成功した除草剤だ。特に、遺伝子組み換えによりグリフォサート耐性食物が開発されてから、その使用量は増加している。これまで食品衛生上ほとんど毒性がないとされてきたが、2015年アメリカ及びヨーロッパで農業とは無関係の一般市民にグリフォサートが蓄積していることが明らかになってから、毒性を再検討する必要が認識されてきた。実際、カリフォルニア州では発ガンを誘導する可能性がある薬剤として指定された。
この研究では、カリフォルニアのランチョ・ベルナルドに住むほぼ全員が大学卒のホワイトカラーを対象に1972年から追跡が続けられているコホート集団の中から、1993−1996年の第一回調査から、2014-2016年の第5回調査まで、尿サンプルが得られた100人の、尿中のグリフォサートとその代謝物AMPAの量を検査している。
結果だが、両化合物ともこの50年で尿中の量は増え続け、例えばグリフォサートでは最初0.024μg/Lだったのが2014-2016年の調査ではなんと10倍を超え、0.314μg/Lに増加している。分解産物のAMPAに至っては、0.008μg/Lから0.28μg/Lと40倍近くに増加している。また、尿中にこれら化合物が検出できた人の数も最初の10%程度から、70%に増加している。
すなわち、カリフォルニア州に限った調査だが、20年間に除草剤の蓄積が私たちの体で進んでいることを示している。このことは、GMO自体の普及より問題が深刻だと思う。最初健康に安全とされてきたグリフォサートも脂肪肝からNASHを引き起こす可能性が示されている。ただ、蓄積がはっきりしたことで、ある程度暴露の続いた個人と、そうでない個人を分けることが可能になっており、暴露による長期効果を調べる糸口が得られたと思う。すでに蓄積が起こった世代はともかく、次世代に同じ問題を残さないことが重要だ。
それにしても、必要に応じてすぐこのような調査が可能なコホート研究が行われているのには頭がさがる。