今日紹介するトロント大学からの論文はこの可能性を疫学的に調べた研究で1月29日発行のThe New England Journal of Medicineに掲載された。タイトルは「Acute myocardial infarction after laboratory-donfirmed influenza infection(検査で確認されたインフルエンザ感染に続く急性心筋梗塞)」だ。
この研究では、カナダオンタリオ州の疾患レジストレーションを用いて、2009年5月から2014年5月にかけてインフルエンザにかかった患者さん、及び2008年5月から2015年5月にかけて急性心筋梗塞で入院した患者さんを抜き出し、インフルエンザ感染中に起こった心筋梗塞の発生頻度を、それ以外の時期での心筋梗塞発生頻度を比べている。
対象はウイルスの感染をPCRなどで確認できたインフルエンザの患者さんに限っており、19045人に上るが、そのうち急性心筋梗塞を起こして入院した人は487人に上る。もちろんほとんどの患者さんはインフルエンザの感染とは全く無関係の時期に発病しているが、インフルエンザウイルスが検出された後1週間以内に発病した患者さんが20人いることがわかった。
この数字からインフルエンザと関連する心筋梗塞を計算すると、ウイルス検出後の1週間はなんと6倍も頻度が上がる。しかし8日以降1ヶ月までを見ると頻度は0.6−0.75と10分の1に低下する。要するに、インフルエンザ感染は間違いなく心筋梗塞の危険性を高めるようだ。
詳しく患者さんを調べると、65歳以上では7.5倍、65歳以下では2.8倍で、高齢で女性に心筋梗塞リスクが高いと結論できる。さらに驚くのは、A型インフルエンザよりB型の方が2倍頻度が高い。総合すると、インフルエンザが心筋梗塞を誘発することは間違いなさそうだ。
ではなぜこのような現象が起こるのか?論文では、心筋梗塞の原因になる動脈硬化も炎症と考えることができ、急性のウイルス感染によりこの炎症が悪化するとともに、血管の収縮や、ストレス反応が合わさって発症するのではないかと推察している。
私も高齢者の仲間なので、来年からはもっと真剣にインフルエンザから身を守ることにする。クワバラクワバラ。