免疫チェックポイント療法やゲノム解析による最新のガンワクチンの研究から抗がん免疫のポテンシャルが確信されるとともに、古典的な方法で免疫を高める方法の開発にも注目が集まっている典型例だと思う。2月27日から、AASJではガンの免疫療法に取組んでいる現場の先生たちとガンの免疫治療の可能性を探る勉強会をスタートさせるが、この論文は最初の論文として取り上げる。
今日紹介するロンドンのフランシスクリック研究所からの論文は、同じ日に勉強会で取り上げようと考えている論文で2月22日号のCell に掲載予定だ。タイトルは「NK cells stimulate recruitment of cDC1 into the tumor microenvironment promoting cancer immune control(NK細胞はタイプ1樹状細胞をガンの周囲にリクルートしてガン免疫を促進する)」だ。
この研究には伏線があり、もともとはガンのプロスタグランジン分泌を止めるとガン免疫反応が上がるという研究に発している。この原因として末梢血を循環していることが知られているタイプI樹状細胞(cDC1)がプロスタグランジンの分泌できない腫瘍組織で増加していること、そしてそれがガンの増殖と反比例することを発見する。
あとは分かりやすい話で、
1) NK細胞のないマウスでは腫瘍内のcCD1の増加が見られない。
2) NK細胞が分泌するCCL5, XCL1が共同してcDC1を腫瘍内にリクルートする。
3) CCL5,XCL1ケモカイン遺伝子を導入したガンではcDC1が強くリクルートされる。
4) プロスタグランジンはcDC1のケモカインへの反応をブロックする。
5) データベースを用いた人間の腫瘍組織の再検討で、NK細胞、cDC1、そしてXCL1などのケモカインの相関が明確に見られる。
すなわち、NK細胞は様々な抗腫瘍効果を持っているが、ケモカインを分泌してcDC1をリクルートし、この樹状細胞がガン細胞を取り込みガン抗原の発現を高め、キラー細胞を誘導するというシナリオだ。ただ残念ながら、実験はマウスで行われており、今後NK療法を受けた組織の検査など、人間でも再確認が必要だろう。
以前にも書いたが、我が国でも保健外ではあるが、ガンの免疫療法が行われており、樹状細胞やNK細胞の注入はその主役になっている。新しい免疫治療が続々開発される現状で、これらの方法は古典的に見えるが、臨床現場という意味では新しい方法を導入できる体制の整った現場と言える。その意味で、今日紹介したような論文は、まだまだマウス段階だが、現場の先生にも大いに知って欲しいと思っている。
ただ、現場の先生は忙しすぎて、原著論文を読み通す時間がないのが問題だ。そこで、2月27日7時AASJの事務所で最初の勉強会を始める。東京の病院とはスカイプでもつなぐ予定だ。月一回のペースで、面白い原著論文をまとめて紹介する予定だ。今回の対象は医師・研究者が対象で、もちろん参加は無料で、AASJとしては、新しい治療法がいち早く患者さんに届けばNPOの使命は果たせる。
2−3日前に資料をお送りする予定なので、参加希望の先生は私の方に連絡してください。
2月27日から、AASJではガンの免疫療法に取組んでいる現場の先生たちとガンの免疫治療の可能性を探る勉強会をスタートさせる
→日時はどのような感じで開催されておられるのでしょうか?
今月は来週火曜日6時半からです。
2019年2月11日です。
2019年1月26日6時半~案内頂いた会には仕事で出席不可でした。
以降の開催予定とか、お手数ですが、下記 e-mailあてに
ご一報頂けるとありがたいです。
4月からは第4月曜を考えています。