最近になってなんと肺線維症にもメトフォルミンが効果を示すことが示され、まさにアスピリンに並ぶ万能薬としての地位を高めつつある。今日紹介するアラバマ大学からの論文は、メトフォルミンの肺線維症に対する効果のメカニズムについての研究でNature Medicineのオンライン版に掲載された。日曜日にアスピリンの多様な効果を紹介したので、今日はこれに続く形でメトフォルミンについて紹介することにした。
この研究では、ヒトやマウスの肺線維症とAMPKシグナル分子の関係を調べ、AMPKが活性化されると肺線維症へのシグナルが入った線維芽細胞のオートファジーを高め、mTORシグナルを抑えることで、コラーゲンなどの蓄積を抑えることを明らかにしている。逆にAMPKの発現を抑えると、線維芽細胞での細胞外マトリックス分子の発現が高まる。
次に、AMPKの機能を高める化合物AICAR やメトフォルミンで細胞を処理する実験を行い、これらのAMPK活性化分子がコラーゲンやファイブロネクチンの合成を止め、オートファジーを誘導することがわかった。
以上の結果から、肺線維症はTGFβなどの刺激が、細胞がオートファジー能力を低下させ、細胞外マトリックスが沈着することが原因となっておこるが、メトフォルミンによりミトコンドリアの合成が高まり、線維芽細胞の細胞死が高まることで、肺線維症を止めることが出来ることが明らかになった。
最後に、この細胞レベルの結果が、生体内でも見られるか調べる目的で、ブレオマイシンと呼ばれる抗がん剤を投与して肺線維症を誘発し、これにメトフォルミンを投与して病気の進行を調べている。結果は期待通りメトフォルミン投与で、肺線維症に関わる分子マーカーの発現が抑えられ、組織学的にも線維化を強く抑えることができている。
これらは全てマウスの話だが、メトフォルミンは最も使いやすい薬剤としてこれまで多くの人に使われてきたこと、またきわめて安価な薬剤である事を考えると、大至急治験を行い、ヒトの肺線維症にも効果があるか確かめてほしいと思う。