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10月30日オーガニックフードでガンは防げるか(10月22日号JAMA Internal Medicine掲載論文)

2018年10月30日
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随分前からヨーロッパでは、BIOとかOrganic をうたったスーパーマーケットが街角で多く見られるようになった。最初見たとき、店に全てオーガニックを集めて、その由来を店が保証するシステムはなかなか合理的だと思った。我が国でも、行くところに行けばあるのかもしれないが,街を歩く限り同じような業態はまだ普及していないように思う。少々値段が高くても、オーガニックを徹底したいと思う人たちが生まれ、それが一定数を超えると、それを支えるアクセスしやすいマーケットができることは間違いないので、我が国ではそこまで徹底したいと思う人間の数はまだまだ多くないのだろう。

しかし、オーガニック、すなわわち肥料、農薬、抗生物質など人工化合物を全く使わない食品に変えれば、ガンなど病気の発生を抑えることはできるのか?今日紹介するフランス・ソルボンヌ大学疫学・統計学研究所からの論文はフランスでオーガニックな食品を使っている人を、平均4年観察して、がんの発生を一般食と比べた論文で、10月22日号のJAMA Internal Medicineに掲載された。タイトルは「Association of Frequency of Organic Food Consumption With Cancer Risk (オーガニック食品を食べる頻度と癌のリスク)」だ。

研究では、まずウェッブで集めた6万人近くの人を、オーガニック食品を食べる頻度(例えば全ての食事でとか、週に2回)に参加者をオーガニック度を1−4段階に分けている。Q1はオーガニックに無頓着という人々で、Q4はオーガニック度が最も高い。

このような方法の最大の問題点は、オーガニック度だけが違うという人たちを集めるのが難しい点で、実際Q4の人は他のグループより当然健康に注意している人で、所得も高く、タバコを吸っている率は低く、肥満も少ない集団になっている。ただ統計学的には比較を妨げるほどではないと、統計の専門家である著者らはこのまま比較を続けている。ただ驚くのは、月給が1200ユーロ以下の人たちの中の13%の人が最も高いオーガニック度の生活を続けている点で、所得をにかかわらず、意思を徹底させている人達がいるのを知って、この生活スタイルが定着していることに感心する。

いずれにせよアンケート調査に応じた人たちを、平均で4年以上追跡し、がんの発生率をそれぞれのグループで確かめ、Q1-Q4各段階のがんにかかるリスクをオッズ比として算定している。

さて結果だが、かなりの効果がある。すなわち、Q1―Q4へとオーガニック度が上がるに従い、ガンのリスクオッズ比は下がり続け、 Q4段階でのオッズ比はなんと0.7にまで低下している。まだ、フォローの期間が短いため、ここのガンについて統計学的に何か言えるまでにはいっていないが、母数が十分な乳がんを取り出してみても、同じ傾向、すなわちオーガニック度の高さと、ガンの発生リスクのオッズ比と相関させる、見事にオーガニック度が上がるとリスクが下がる。

もしこの結果をそのまま受け入れれば、やはり私たちはがんの原因になる多くの化学化合物に囲まれて生きており、オーガニックに変えることで大きな効果があるという結論になる。著者らの頭の中にあるのは、農薬やホルモン類似物質だが、もちろんこのような調査では単一の物質に特定することはできない。あまり気にせずこの歳まで生きてきた私たちにとっては、もう手遅れだが、若い世代にとっては重要な問題だろう。さらに多くの調査研究が行われることを望む。しかし、このような調査が難しい問題をClinical Trial Govに登録して、真正面から取り組む疫学者がいるのにも脱帽。

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