この時期世界でT細胞の反応を調節している分子の遺伝子クローニングが相次いだが、まだ機能の全貌がつかめていない分子の一つが、1990年に報告されたLAG3で、クラスIIMHC によって刺激され、T細胞の反応を抑えるとされてきた。もし本当だと、PD−1のようにチェックポイント治療標的として使えるので、最近になって再検討が始まっていた。今日紹介するエール大学からの論文は、LAG3の新たなリガンドFLP1を特定し、臨床応用の可能性を示唆した論文で1月24日発行予定のCellに掲載された。タイトルは「Fibrinogen-like Protein 1 Is a Major Immune Inhibitory Ligand of LAG-3(Fibrinogen-like protein 1はLAG3の主要な免疫抑制リガンド)」。
研究では6000種類のcDNAを細胞に導入してLAG3と結合する分子を探索し,LAG3がこれまで言われていたMHC IIだけでなく、肝臓で作られるfibirinogen like protein 1(FGL1)と結合することを発見する。基本的には、この発見が研究のハイライトで、あとはFLP1が免疫チェックポイント分子として働いているかを着実に調べている。
まずLAG3は活性化されたT細胞だけに発現し、FGL 1によってT細胞の増殖が低下する。すなわち、FGL 1はLAG3を介して免疫反応を抑えるチェックポイントリガンドになる。
さらにその機能をFGL 1ノックアウトマウスで探ると、免疫システムの異常はほとんど見られないが、時間がたつと抗DNA抗体が検出されるなど、自己免疫症状が見られるようになる。
そこでこの分子をノックアウトしたマウスにガンを移植すると、腫瘍の増殖は強く抑制され、それぞれに対する抗体を用いてがんの増殖を抑制することも可能であることがわかった。すなわち、新しいチェックポイント分子として治療に使える可能性が生まれた。
最後に、ヒトのガンデータベースをサーチして、肺がんやメラノーマの患者さんの予後と、血中FGL1の濃度を比べると、FGL 1が低い人は予後が極めて良いことが明らかになった。したがって、癌が発見された時点でFGL1が高い人を抗体で治療する可能性が生まれたという結果だ。
基本的には、新しいチェックポイント治療の可能性を示した研究で、本当に治療に使えるかは今後時間をかけた検討が必要だろう。ただ、このチェックポイントが他と全く違うのは、リガンドが分泌される点で、その意味で新しい標的としての期待は持てるような気がする。