多発性硬化症治療剤「フィンゴリモド」がブロックバスターに
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多発性硬化症治療剤「フィンゴリモド」がブロックバスターに

2013年8月28日
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京都大学で生まれた稀少難病薬が一昨年に日米で発売されましたが、昨年はその売上が1,500億円に達して、2年目にしてブロックバスター入りしました。

フィンゴリモド(fingolimod)は、京都大学薬学部 藤多哲朗教授(当時)により冬虫夏草の成分を基に見出され、吉富製薬(現田辺三菱製薬)との共同研究・開発を経て、ノバルティス社(スイス)にライセンスされて多発性硬化症( MS)の治療剤として承認を受け2011年に発売されました。日本では、「イムセラ」(田辺三菱製薬)および「ジレニア」(ノバルティスファーマ)として、それぞれの独自商品名で共同販売されています。

多発性硬化症(患者会「MSキャビン」 http://www.mscabin.org/)は、感覚障害、視神経炎、運動麻痺などが認められる中枢神経系の炎症性脱髄疾患で、厚労省の難治性疾患克服研究事業において特定疾患に認定された130疾患に含まれる疾病で、国内における患者数は、約15,000人と代表的な稀少難病です。

本剤は、既存の治療薬とは異なる全く新しい作用機序(リンパ球上のスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P受容体)に作用して、自己反応性リンパ球の中枢神経系への浸潤を阻止し、その結果、多発性硬化症における神経炎症を抑制する) を持つ免疫調整剤の一種です。

藤多京大名誉教授の熱心なご尽力に加え、過去20年間内外製薬企業の合従連衡に耐えての厳しい開発業務の成果でしたが、残念ながら国内の製薬会社単独の発売とはなりませんでした。今年5月の田辺三菱製薬の「昨年度決算説明会」では、ライセンシーのノバルティス社から195億円のロイヤルティを得たと発表しており、一製品で得た収益としては同社として最上位クラスであったはずです。因みに、「イムセラカプセル0.5mg」は、1日1回経口投与で、薬価は8,172円/カプセルです(2011年11年25日の当初薬価収載時)。

その市場性のなさから、研究段階から見向きもされない稀少難病治療薬ですが、患者のためにリスクに挑戦して医薬品とすれば、企業にとっても十分利益になることが裏付けられました。この成功例に基に、大学の研究室での研究対象に加え、製薬会社や化学会社など他業種の研究室においても、難病治療薬にも目配りされ、その創薬の芽を見落すことなく、さらに開発に向けての検討がなされる契機となることを願っています。              (田中邦大)

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