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自閉症の科学11 てんかん発作を抑える腸内細菌

2019年8月24日

てんかんの発作に対して様々な抗けいれん薬が開発されてはいるが、治療に反応しない「難治性てんかん」と呼ばれる症例が数多く存在する。これまでは手術的にてんかんが起こる場所を取り除く以外方法がなかった難治性てんかん治療に、最近になって新しい治療法が開発され期待されている。一つは、大麻やその成分の使用で、子供にも使えるよう大麻成分を用いた治験が進んでいる。もう一つの方法が、糖質制限を中心にしたいわゆるケトン食による治療で、様々なタイプのてんかんに効くことがわかってきた。

ただ大麻成分を用いる治療と比較した時、ケトン食によるてんかん治療は効果のメカニズムが明らかでなく、また多くの家庭にとっては導入が難しいため、普及が遅れていた。今日紹介するUCLAからの論文はケトン食により腸内細菌の構成が変化することが、ケトン食で神経興奮性を抑制されるメカニズムではないかと着想し、それを確かめた研究だ(Olson et al, The gut microbiota mediates the anti-seizure effects of ketogenic diet(腸内細菌叢がケトン食の抗けいれん作用を媒介する)Cell 173:https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.04.027)。自閉症の中にはてんかんを併発する場合もあるので、紹介することにした。

食を通した治療の効果や副作用はまず腸内細菌叢を疑うのが今の常識になっている。この研究ではまず、ケトン食が効果を示すてんかんモデル系を作成した上で、効果が見られたマウスの腸内細菌叢を調べ、アッカーマンシア(AK)とパラバクテロイデス(PB)と呼ばれる2種類の細菌の割合が著明に上昇していることを発見する。

あとはこれらの細菌が発作の抑制に関わるか因果性を確かめる必要がある。まず細菌叢がケトン食の効果に関わることを調べるため、無菌マウスや抗生物質で腸内細菌を除去したマウスにケトン食を食べさせる実験を行い、ケトン食の効果には細菌叢が必要であることを確認する。

そしていよいよ細菌を移植する実験を行い、最終的にAKとPB両方の細菌を移植すれば、普通食でも神経が興奮しにくくなり、発作の回数を減らせることを発見する。すなわち、ケトン食はこれらの細菌の選択的な増殖を促すことで、発作を起こりにくくしていることになる。

では、なぜこの2種類のバクテリアが多いと、神経の興奮性が抑えられるのか?

細菌が移植された動物の腸内や血清中の代謝物を調べ、ガンマグルタミン酸化されたアミノ酸の低下が最も激しいことを発見する。また、この全身性の変化に対応して、海馬の神経伝達因子のうちGABAの方がグルタミン酸より割合が高まることを突き止めている。この結果は、腸内でのアミノ酸のガンマグルタミン酸化を止めてガンマグルタミン化されたアミノ酸の量が減ることで、抑制性の神経活動が上がり、発作を防げる可能性を示している。

そこで普通食のマウスにガンマグルタミン酸化を阻害する分子を投与すると、発作を減らせることも証明している。マウスの話とはいえ難治性てんかんを抑える新しい切り口が間違いなく示されたようで、個人的には期待している。例えば、AK+Pbを腸内に移植する治療法、さらには腸内細菌にのみ効果があるガンマグルタミン酸化阻害剤など、比較的導入しやすい治療法に思える。

同時にケトン食サプリとして使われるアミノ酸を直接取り込むと、腸内でガンマグルタミン酸化がおこり、逆に興奮性が高まることも示し、ケトン食ならなんでもいいというわけにはいかないことも示している。これまでのケトン食の再検討も含め、新しい治療法が本当に期待ができるのか、是非研究を加速してほしい。


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