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1月31日:公的バンクへ預けたデータは預けた個人の自由なアクセスを補償すべき(1月24日号Science誌掲載の意見)

2014年1月31日
私は21世紀文明の柱の根幹の一つはゲノムだと考えている。なぜそう思うかについては、「21世紀ゲノム文明」に詳しく述べようと現在奮闘中だが、様々なゲノムデータベースの充実や、考古学や歴史学がゲノム解析と融合して新しい科学へと変化していく様を見ると、書かなければならない事が増えて焦ってしまう。現在進む個人ゲノム解読の先には、ゲノムも含めた個人の情報が蓄積された途方もないビッグデータが生まれる。我が国でも、このビッグデータをどう扱うのかと同時に、セキュリティーやプライバシー保護といった新しい倫理問題についても議論が始まっている。先週号のScience誌にバンクのあり方について核心をついた意見がでていたので紹介する。ハーバード大、アムステルダム大、ロンドンキングスカレッジの研究者の発表した共同意見で、「Raw personal data:providing access (生の個人情報:アクセスの提供)」がタイトルだ。意見は明確で、私たち個人が医学研究に提供した材料から得られるゲノム情報などの全ての情報は、提供者に自由に利用させるべきだと言う主張だ。もちろん自分でお金を払ってゲノム解読を依頼するサービスの場合には、これは当たり前だ。しかし公的なバンクになると様子は違っている。例えば我が国では、患者さんとデータが連結されていたとしても、患者さんのリクエストに応じてその人のデータを提供しない事を納得した上での協力を要請している。しかし例えば提供組織からゲノムが読まれてそれがバンクに保存されている場合、研究用のデータとしてだけではなく、提供者個人にとっても貴重な情報になることは間違いがない。Scienceに掲載された意見では、提供者が自分のデータに自由にアクセスできる事の積極的な意味を提示している。1)全体の中の砂粒でしかない個人データにアクセスできると言う事だけで透明性が上がり、研究する側もデータ改変などがしにくくなる。2)研究者と研究対象者の対称性が確保され、この新しい関係から複雑な人間の病気や性質に関する新しい科学が生まれる、3)研究対象者が自分のデータを見る事で、何を提供しそれが何に使われるかはっきりと知る事が出来るため、自分で研究参加への決断が出来る、の3点だ。もちろん研究の秘密厳守(例、2重盲検)、セキュリティー、ハッキングなど多くの問題がある。ただ、それを理由に提供者のアクセスを遮断するのではなく、逆にそれを補償するためのテクノロジーを開発して解決すべきと主張している。そして最後に、「生のデータにアクセスできる過程は、後で研究についての情報を貰う権利を確保する事とは全く別の話だ。どんなに包括的な情報を被験者が理解できるようにして提供したとしても、生のデータセットにアクセスできる権利を差し止める事にはならない」と締めくくっている。私もこの意見に完全に賛成だ。当分我が国ではこの様な議論が官やアカデミアからは生まれることはないと思い、あらゆる公職を辞して、民間からこの様なデータバンクを造れないか活動している。しかし、もし我が国政府やアカデミアがこの方向を真剣に目指すなら、もちろん協力は惜しまないつもりだ。

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