AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 11月30日 GPR146は動脈硬化防止の標的になるか?(11月27日号 Cell掲載論文)

11月30日 GPR146は動脈硬化防止の標的になるか?(11月27日号 Cell掲載論文)

2019年11月30日

20世紀の終わり、ヒトゲノムが解読されつつある時、様々な病気と相関がある遺伝子多型のリストが急速に拡大した。このトレンドは、最近の公的バンクの整備により100万を超える対象を調べられるようになると、さらに加速している。ただ問題は、多型を分子機能と対応させるためには、動物実験も含めた丹念な実験が必要で、多型解析の成果を臨床に生かすまでの道は長い。

今日紹介するハーバード大学からの論文は高脂血症に相関づけられていたGタンパク質共役型受容体GPR146がコレステロールの分泌に関わることを突き止めた研究で11月27日のCellに掲載された。タイトルは「GPR146 Deficiency Protects against Hypercholesterolemia and Atherosclerosis(GPR146の欠損は高コレステロール血症と動脈硬化を防止する)」だ。

この研究は血中コレステロールの濃度と関連するrs11761941の下流に存在する遺伝子が薬剤の開発が可能なGタンパク質共役型の受容体GPR146であることに気づき、これが高脂血症治療の治療標的になるのではと着想する。

この可能性を確かめるため、まずGPR146が欠損したマウスを作成すると、HDL, IDL/LDL,及びVLDLと全てのコレステロールレベルが低下することがわかった。すなわち、コレステロールを下げるという意味では、新しい創薬ターゲットになる。

あとはメカニズムを詳しく調べているが、簡単に想像される経路はほとんどノックアウトで影響されず、解明に結構時間がかかったようだ。しかしともかく、細胞レベル、及び個体レベルで納得いく経路を特定している。それをまとめると次のようになる。

まずこの受容体が刺激されると、ERK1/2分子を介して細胞内のコレステロールを感知する転写因子SREBP2を活性化、SREBP2が核に移行してコレステロール代謝酵素などの転写を高め、最終的にVLDL分泌上昇、高コレステロール血症が起こるというシナリオだ。すなわち、コレステロールの代謝経路に関わる分子の転写調節の核と言えるSREBP2の活性をさらにチューニングするシステムであることを明らかにしている。

またLDL受容体が欠損したマウスで起こる動脈硬化を防止できることも示しており、この受容体が高脂血症治療の重要な標的になりうることを示唆している。

結果は以上で、多型解析の結果を創薬などと結びつける研究がようやく進み始めたことを実感させる研究だ。ただ、結局この下流にスタチンのターゲットであるHMGCRも存在しており、これを超える安全な化合物を開発できるかはまだまだ予想できないように思える。少し様子を見よう。


  1. okazaki yoshihisa より:

    多型を分子機能と対応させるためには、動物実験も含めた丹念な実験が必要

    Imp:
    今回の論文では、実験動物の作成にCRISPR/Cas9 systemも使われているようです。これも計算機科学と生命科学のコラボの成果の一つでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*