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4月7日:万能薬でも無理な事もある。( 4月2日号 The Lancet掲載論文)

2014年4月7日
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おそらく、妊娠、出産、育児の期間は正確な医療情報が最も必要とされるときだろう。巷には多くの情報が溢れており、現在ではソーシャルネットを通した口コミも大きな効果を持っているはずだが、正確でないと混乱の元になる。医療情報について言うと、信頼できるかどうかは統計学を基礎にした科学的検証を受けているかどうかだ。しかし多くの情報が科学的検証を受ける事なく流布している。従って、私たちも病気の方だけでなく、親になる方々にも、科学的検証を受けた情報を出来るだけ集めて提供したいと考えている。今日紹介するのは1−2度流産を経験された方(習慣性の方は除外している)の妊娠、出産に低用量アスピリンが有効かを確かめるための無作為2重盲検法(統計学的には一番厳密な調査法)を用いたアメリカ国立衛生研究所からの論文だ。タイトルは「Preconception low-dose aspirin and pregnancy outcomes:results from the EAGeR randomized trial(妊娠前からの低用量アスピリン服用の妊娠に対する効果:EAGeR無作為化治験)だ。これまで紹介して来たように低用量アスピリンはがんや卒中の予防など多くの疾患を防ぐ効果が科学的に確かめられた万能薬だ。実験的な研究では子宮内膜の増殖を助ける事もわかっており、これまで習慣性流産の患者さんの流産防止に有効であると言う報告もある。今回の研究はより一般的な状況で、1−2回流産を経験して心配し始められた方々が対象だ。約1200人の妊娠を希望されているが20週以内に流産を経験された方々を集め、半分に低用量アスピリンと葉酸、もう半分に偽薬と葉酸を妊娠前から投与して、両群の妊娠、出産を比べている。結論だが、投与群の方が妊娠反応などの診断率が上がると言う結果はあるが、出産数及び、正常・異常児の出産率ともに統計的な差はなかった。逆に、低用量アスピリン服用を続けても生理のサイクルに影響はなく、また胎児の異常を誘導する事もない事は重要だ。現在では若い人達も万能薬としての低用量アスピリン服用を続けている可能性があるが、妊娠したからと言って中止する事もないようだ。しかしどんな事でもしっかり科学的に検証しているのには頭が下がるし、またThe Lancetの様な超一流紙がそれを取り上げる事で、世の中に正確な情報を提供する。悪貨が良貨を駆逐する事がない様、私たちも是非努力を続けたい。

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