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4月25日:続くタミフル論争(4月23日Nature誌掲載コメント)

2014年4月25日
4月14日このコーナーで、オックスフォード大学とコクラングループが共同でBritish Medical Journal(BMJ)に発表したタミフルの有効性に関する論文を取り上げた。最も厳密な医療統計的手法(無作為化試験)を採用した論文だけを選んでタミフルの有効性について再検討すると、症状改善は明らかだが、重症化を予防する効果はないと言う驚くべき結果だ。有効性があるとするWHOなどの勧告に基づき、争うように国家備蓄を進めた多くの国をだましたのではとコクラングループは糾弾している。日本では朝日新聞が取り上げただけだったが、多くの国ではこの指摘を真剣に受け止めており、現在も議論が続いている。今週発行されたNature誌もこの問題についてコメンタリーを載せている。タイトルは「Tamiflu report comes under fine: conclusion on stockpiling of antiviral drugs challenged(タミフル論文が攻撃にさらされている:抗ビールス剤備蓄についての結論に疑義が向けられている)」だ。このコメンタリーではBMJの結論に反対する意見を紹介している。いかなる意見も盲信せず様々な可能性を検討するのが科学だ。その意味で私もこのコメンタリーを取り上げる事にした。BMJ論文に対する最も重要な反論は、「インフルエンザが流行する中で無作為化2重盲検法という厳格な臨床治験が可能なのか?」あるいは「この厳格性が逆に統計的足かせになって間違った結論を導くのではないか?」だ。「統計的厳格性を錦の御旗にして数の少ないビールスへの治療手段を排斥してしまうリスクを侵していいのか?」など全て真剣な批判だ。事実、最近The Lancet Respiratory Medicineに掲載されたオランダの観察研究ではタミフルが死亡率を25%低下させる事を報告している。一方コクラングループは、無作為化試験以外のあらゆる方法は認めないと応じている。一般の方には理解しがたいと思うが、私はこの論争が21世紀に取り組むべき重要な課題をに関わっていると思っている。生身の人間を対象にした科学の方法は何か、無作為化試験に変わる方法はないのか、わかりやすい言葉で市民に説明できないと医療の将来はない。BMJ論文がこの方向の研究を加速させる事を期待する。他にもBMJ論文では観察された症状軽減効果を過小評価しているという批判も掲載しているが、これは論文の読み方の問題で、重要な指摘には思えなかった。いずれにせよ、BMJはコクラングループをはっきりと支持し、Natureは現時点では反対意見に肩入れしている様に思える。我が国ではともするとメディアの中立性が強調されるが、私は専門誌であろうと編集者が立場をはっきりさせて議論していいと思う。重要なのは一つの意見があらゆる意見を飲み込む事だ。この論争はこれからも注目だ。

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