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5月8日:自閉症の遺伝性に関する大規模調査研究(5月7日号アメリカ医師会雑誌(JAMA)掲載)

2014年5月8日
このコーナーでも何度か自閉症の遺伝子研究について紹介して来た。ただ遺伝子研究の結果を正確に解釈するためには、発生・成長過程での環境要因をしっかり調べる必要がある。また治療のヒントを得るためには環境要因の分析が欠かせない。当然これまでも家族内での発生や、一卵性双生児間の一致率など様々な調査が報告されている。一卵性双生児の一致率を調べたある調査では90%と言う数字も示されており、自閉症の発症に一定の遺伝子の組み合わせが関わる事は間違いがない。今日紹介する論文は、自閉症の遺伝性や環境要因の寄与を調べるため自閉症児の家族内発生を調べたスウェーデンの調査研究で、5月7日JAMA誌に掲載された。タイトルは「the familial risk of autism(自閉症の家族リスク)」だ。この論文によると、これまでに行われた自閉症の家族内発生調査としては最大規模の調査で、1982年から2006年までに生まれた約350万人の子供について、2009年時点で自閉症スペクトラム障害及び自閉症と診断が確定している約32,000人の患者さんの家族についての調査を行っている(ここではまとめて全て自閉症と記した)。しかしこれまで指摘されているように1%近い発生率は高く、重点的取り組みが必要な病気である事が理解される。さて調査では一卵性双生児、2卵性双生児、両親が同じ兄弟、母親が同じ兄弟、父親が同じ兄弟、従兄弟の中に自閉症児がいる場合、自閉症が発症する頻度を調べている。結果は予想通りで10万人が一年間に発症する率に換算すると、それぞれ153.0, 8.2, 10.3, 3.3, 2.9, 2.0になっている。この数字からわかるのは、遺伝子の共有率が下がるほど発症率が低下しており、遺伝的要因は明らかだ。例えば両親が同じ場合は、2卵生双生児同士も、兄弟同士も遺伝子の一致率は同じだ。8.2 vs 10.3という発症率はこの結果と合致する。これらの結果を元に遺伝子を共有している場合の遺伝率を計算し直すと、自閉症で約50%になる。以前の一卵性双生児についての研究は一致率が90%から40%までふれていたが、今回の大規模調査の結果は低い方の結果を支持する物だ。この50%と言う数字を、「50%も遺伝性があるのか」ととるか「50%しか遺伝性がない」ととるかで気持ちは大きく異なる。これまでの自閉症遺伝子の研究から、自閉症発症には何百もの遺伝子が関わっている事が知られている。このため遺伝的な変化を正常化させる事は不可能に近い。とすると、自閉症発症を早く予測して適切な治療で発症させないことが対策の中心になる。その時、50%しか遺伝性がないという結果は重要だ。即ち、環境要因で十分発症を止める可能性がある事を示している。残念ながら今日紹介した研究ではどのような環境の差があるのかについては詳しい解析はなされていない。しかしこの研究に参加した子供と家族は登録され詳しい解析が可能だ。同時に、ゲノムを調べる事で、従来の自閉症遺伝子についての結果を更に深く理解する事が可能になる。このようにゲノムの21世紀だが、ゲノム以外の正確な情報をどれほど集められるかがゲノムを様々な性質に結びつけるための鍵だ。ゲノムも含めた人間についての情報の統合が今世紀初頭の大きなトレンドになっている事を確信する。

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