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6月19日:中国科学の自信(米国アカデミー紀要オンライン版掲載論文)

2014年6月19日
昨日China Knowledge Resource Integrated Databaseと言う組織から、中国からの論文の質について評価を依頼するアンケート調査がメールで送られて来ていた。メールでの調査依頼につき合う時間は無いので、いつも通り放置したが、しかし自国の科学技術論文の評価を知るにはなかなかいい方法だと思う。これまでこのホームページでも紹介したように中国の科学力は様々な分野で急速に上昇しており、面白いと思う論文が増えただけでなく、若いグループが躍進していることを感じる。それを裏付けるようにこの中国の自信をのぞかせる論文が米国アカデミー紀要オンライン版に掲載されていたので紹介する。タイトルは「China`s rise as a major contributor to science and technology(主要な科学技術提供国としての中国の興隆)」で、自信がはっきり示されている。著者はミシガン大学の著明な中国人社会学者で、現在は中国アカデミーのメンバーとしても活躍している。論文では、1)中国の科学技術者の数が急速に増大しており、2020年には世界一になると思われること、2)医師や弁護士の収入が科学技術者よりはるかに良いアメリカと比べると、科学技術者が優遇されていること、3)学士、博士取得者が急増していること、4)科学技術への投資がすぐにGNPの2%に達しようとしていること、5)引用回数の多い科学技術論文の数が既に我が国を追い越し、ドイツや英国のレベルに達しつつあることを示している。調査に利用した国勢調査の信頼性など幾つかの問題はあるが、論文の数やインパクトについてはトムソンロイターのデータを利用しているので誰がやっても同じだろう。私も同じ実感を持っており、失脚から回復する度に大学改革を行おうとした鄧小平の科学技術立国政策が着々と実を結んでいるのを実感する。更に言うと、中国科学界は若返りが進むと同時に、特にアメリカに膨大な数の中国人研究者が滞在しており、レベル底上げと国際性に貢献している。いずれにせよ、ここまでなら我が国の政府も含めてどの国でも分析をしているはずで、なるほどで終わる。しかし最後のセクションは我が国にも参考になる。中国科学の興隆を示した後、助成のほとんどが行政からのトップダウンマネーであることが様々な問題の温床になっていることについても分析している。はっきりした実体はつかめていないようだが、トップダウンシステムが中国で捏造、盗作、汚職を生む温床になっており、この様な行為が増加傾向にあることを指摘している。その原因として、行政の評価はどうしてもマニュアル中心になるため、論文の数、インパクトだけが評価されてしまうことを指摘している。これは我が国も耳を貸すべき提言だ。これを裏付けるため最後の図で、捏造、盗作、汚職の記事がグーグルニュースに何回現れたかを示している。2011年は捏造が1170、汚職が530、盗作が98と言う数に上り、科学不正の問題への関心の高さを語っている。おそらく私に送られて来た外国人から中国の論文について評価を依頼するアンケート調査はこの構造問題に対する中国政府の一つの改善案かもしれない。もちろん外国人に聞いた所で、評価の構造が変わらない限り根本的な改善が可能かどうか疑問だ。ただこれは対岸の話ではない。小保方問題に揺れる我が国も、構造問題としてもう一度助成のあり方を考え、様々な試みを進める時期が来ていると思う。

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