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6月27日:細菌ダイエット(Journal of Clinical Investigationオンライン版掲載論文)

2014年6月27日
昨年9月9日、このホームページで肥満と腸管の細菌叢に深い関係があり、細菌叢を変化させることで肥満を防ぐことが出来ることを示す論文を紹介した。最近のこの分野の進展は著しく、なぜ細菌叢の変化が代謝や食欲の変化につながるのか理解が急速に進展している。この進展を受けて、肥満のような生活習慣病に対して便移植による治療が行われていると聞く。この勢いを見ていると、いつか遺伝子操作を行った細菌を使ったダイエットが始まるのではという印象を持っていたが、案の定この可能性を試すバンダービルト大学の研究がJournal of Clinical Investigation誌に発表された。タイトルは「Incorporation of the therapeutically modified bacteria into gut microbiota inhibits obesity(治療目的で遺伝子操作したバクテリアを腸管細菌叢に導入すると肥満を阻止する)」だ。これまでの研究で、Nアセチルメタノラマイド(NAE)という代謝産物が食欲抑制効果を持つことが知られていた。この前駆物質(NAPE)は食事をとると合成が上昇する一方、高脂肪食をとると合成が低下することがわかっていた。この研究では、これを補うためNAPEを大量に合成できるよう大腸菌を改変し、マウスに投与して肥満予防効果があるか調べている。結果は、8週間水に混ぜてこの大腸菌を投与したマウスでは食欲が抑制され、高脂肪食をとらせても肥満にならないと言う結果だ。生きた大腸菌のおかげで、投与を止めても最低4週間は腸内細菌叢に住み着いて効果を発揮すると言う結果だ。また肥満のモデルマウスに投与すると体重増加を抑制できるので、遺伝的要因が疑われる肥満にも効果があると言う結果だ。この研究は全てマウスモデルで行われている。しかし予想通りの結果が得られており、前臨床研究としては期待できる結果だ。ではどのような条件が整えばこの様な治療の臨床研究が受け入れられるのか?遺伝子組み換え食物でも議論が続くことを考えると、ハードルは高い。今後他の病気に対しても腸内細菌叢を標的にする治療開発が進むはずだ。我が国でも早めの議論が必要だろう。

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