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6月28日:1000人のお母さんに聞く(Food Quality and Preference誌7月号掲載論文)

2014年6月28日
実を言うとNPO活動の一環として日本の若いお母さん達にエビデンス(証拠)がしっかりした情報を提供できる仕組みを考えている。一方個人的には21世紀について本を書いており、ちょうど哲学・科学を問わず絶対的「真実」が存在しないことを率直に認めた英国のデビッド・ヒュームの哲学について書いている所だ。両方に共通なのは、科学的エビデンスとは何か?如何にすれば科学者社会から生まれるエビデンスを大衆が共有できる情報(コモンズ)にするか?と言う問題だが、この問題を考えるため本や論文に目を通しているうちたまたま目に留まったのが今日紹介するコーネル大学からの論文で、Food Quality and Preference誌7月号に掲載されている。タイトルは「Ingredient-based fears and avoidance:antecendents and antidotes(食品添加物に対する恐怖と忌避:バイアスと対抗手段)。」だ。日本ではあまり騒がれていないが、コーンシロップとして様々な食品に甘みをつけるため添加される異化性糖は健康に良くないと言う意見がアメリカではネットに溢れている。実際googleでhigh-fructose corn syrup(HFCS)を検索すると、トップ10には全てHFCSが健康を害すると言うサイトで占められる。HFCSはトウモロコシなどからのでんぷんをブドウ糖へと変換してから、甘みの強い果糖に変換したもので、欧州と比べるとアメリカの糖需要の大きな割合を占めるようになっている。危険か危険でないか、どちらの意見についても私自身でまだ調べていないので今日は論文の紹介だけに留める。この研究では約1000人の子供を持つお母さんから聞き取り調査をして、HFCS添加について心配しているグループとあまり気にしていないグループについて調査を行っている。結論は、1)HFCSを避けているお母さんはその危険を誇張して伝える傾向にある、2)HFCSを避けるお母さんの情報ソースはテレビよりインターネットで、それも自分で決めた結論を支持する意見をインターネット上で探す傾向にある、3)自分の属するグループ(レファレンスグループ)からの影響は部分的、4)不健康な食品に入っている添加物が問題のない食品にも添加されていると、その食品の評価が下がる、5)HFCSの歴史や一般的な使用について説明を受けると不安は和らぐ、の5項目にまとめられる。他にも、HFCS添加を懸念するお母さんの多くが糖全般の添加について心配していること、アメリカのHFCSが遺伝子組み換えトウモロコシを利用していることに対する懸念、などが背景にあることも指摘している。その上で、開発の歴史を含む正確な情報を常に開示するしか懸念に答えることは出来ないこと、そしてリスクを議論する時にはそのメリットも同時に議論する冷静さが必要であると提言している。一面だけを取り上げて議論したがるのは我が国も同じで、私たちも大いに参考になる調査だ。私が一番興味を持ったのは2番目の結論で、インターネットが自分の好きな意見を探すための情報ソースになっている点だ。これはインターネットを使って情報提供をしたいと思っている私には重大な警告になる。ヒュームのようにそれが人間だと言って済まさないため「さてどうするか?」まだまだ考えなければならないことは多い。

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