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8月18日:睡魔が集中を妨げる理由(8月14日発行Cell誌掲載論文)

2014年8月18日
今日本に帰って時差に悩まされている。寝れないのもしんどいが、向こうなら寝ていた時間に、起きて本や論文を読んでいるとなかなか集中できない。眠いと言っても意識はある。何が集中を妨げるのか?そんなことを考えながら論文を見ていたらぴったりの論文に当たった。NY大学からの論文で8月14日号のCell誌に掲載されていた。タイトルは「State-dependent architecture of thalamic reticular subnetworks(視床網様核のサブネットワークが持つ状態に応じた構築)」だ。視床は視覚や聴覚などの感覚神経と大脳皮質をつなぐ役割を持つとされている。ただこれまでは自由な生活を送っている動物で視床の機能を調べることは困難だった。この研究では、まず普通に寝起きしているマウスの視床の活動を記録し、またそこでの神経活動を操作する実験系の構築を行っている。これによって、覚醒時と睡眠時での視床の活動を記録できるようになった。詳しい方法は全て省略して話を進める。この結果、視床網様核(TRN)の神経には、視床後方の視覚などの感覚神経が投射されている領域に投射する神経群と、前方領域(辺縁系とリンクしている)に投射する神経群の2種類があることがわかった。特に挙動が面白いのは、感覚神経が投射している領域に神経を伸ばしている神経群で、睡眠時、それも脳波が遅い振幅のリズムを刻む(Slow wave sleep)熟睡した状態で、盛んに興奮している。一方、覚醒時にはその興奮は収まる。この結果は、TRNが睡眠状態を感知して興奮し、感覚神経の刺激に何らかの介入をして寝ていることを教えている可能性を示している。そこで今度は、覚醒時にRTNを興奮させてどのような行動変化が起こるかを調べている。ここで登場する技術が、これまでここでも紹介して来た光遺伝学で、特定の神経を光で興奮させたり抑制したりする技術だ。誤解を恐れず結果を私流にまとめると、RTNを興奮させると、普通ならサッと出来る課題をこなすのに、時間がかかるようになる。決して出来なくなるわけではない。課題を始めるまでに特に時間がかかるのだ。一方、RTN活動を抑制すると、課題をこなす効率が上がる。マウスを使っていても、結構人間の生理に迫れる面白い仕事だ。この仕事を読んで自分の症状がわかった様な気がした。時差で覚醒時でもふっと睡眠リズムが発生する。するとRTNが興奮して、睡眠モードに感覚がもどされ仕事の効率が落ちる。勿論脳細胞を操作する光遺伝学は使いたくないが、なんとかこのRTNの興奮を抑えられたら、時差も少しは良くなるかもしれない。ところで今も寝れず既に午前2時半、RTNは抑制されているおかげでこの紹介文を書くことが出来た。しかし寝れないのはまた別の話だ。

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