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2月28日:食品に添加された乳化剤の危険性についての警告(Natureオンライン版掲載論文)

2015年2月28日

Natureは最近社会派の編集者が増えたのだろうか?昨年9月。私たちが日常口にしている人工甘味料が、糖尿を防ぐどころか、腸内細菌叢を変化させてインシュリン抵抗性を誘導し、逆に糖尿病と同じ代謝障害をきたす可能性を示した論文がNatureに掲載され、驚いた(9月19日このHPで紹介http://aasj.jp/news/watch/2190)。今日紹介するジョージア州立大学からの論文も極めて深刻な警告論文だ。「Dietary emulsifyiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome (食品に添加された乳化剤はマウスの腸内細菌叢に影響して腸炎やメタボリックシンドロームを促進する)」というタイトルの論文で、Natureオンライン版に掲載された。タイトルにある通り、今回問題になったのは、カルボキシメチルセルロース(CMC)とポリソルベート80(PS80)で、アイスクリームや多くの食品に乳化剤として添加されている。PS80は一時発がん性が問題になったが、FDAが1%までなら許容できると認可している。CMCに至っては安全性自体を問題にする必要がないとされてきた。このグループは、乳化剤が細胞自体ではなく、腸粘膜細胞を守っている粘膜層を破壊する可能性について調べた。すると予想通り、食品添加に許されている程度のCMC、PS80を飲ませたマウスでは、普通なら30ミクロン程度離れた場所に隔離されている腸内細菌が10ミクロン近くに迫って、粘膜の中に多く住めるようになっている。すなわち、粘膜の保護作用が破壊されている。この結果、粘膜の透過性が高まり、腸炎を起こす遺伝子変化を持つモデルマウスの腸炎発症が早まる。この結果腸の長さは2割も短くなる。さらに、いわゆるメタボリックシンドロームと呼ばれる状態になり、正常と比べると体重は増え、過食傾向が出る。大変なことだ。最後に、この効果が乳化剤が直接粘液に作用して破壊するのか調べるため、腸内細菌が全く存在しない無菌マウスに乳化剤を飲ませて調べたところ、粘膜は全く破壊されない。すなわち、乳化剤の効果がすべて腸内細菌を介して起こっていることが明らかになった。実際、先に述べた細菌の存在しないマウスに細菌叢を移植した途端、粘膜破壊がおこる。最後に人間の食生活に合わせた投与の仕方で、乳化剤の効果が実験的条件の結果でないこともはっきりさせている。ディスカッションで、20世紀の中盤からクローン病や潰瘍性大腸炎といった腸炎やメタボリックシンドロームが増加した一つの要因は、乳化剤を食品に添加するようになったからではないかと、極めて強い警告を発している。これは大変だ。タバコと同じで、この因果性をヒトで疫学的に証明するためには時間がかかる。ただ、その気になれば、ヒトでの実験系を作ることも可能ではないかと思う。前回紹介した人工甘味や、今回の乳化剤の危険性を警告した研究は、これまで自分の体は一つのゲノムを共有する細胞だけからできていると考えてきた思い込みに対する警告でもある。腸内細菌叢も体の一部だということが明らかになってきた今、私たちは謙虚かつ真剣にこの警告を受け止めることが必要だ。このような警告を掲載したNatureを社会派という印象を持った私自身が間違っていた。このデータを得たなら警告するのが正常だ。今、20世紀の遺産にしがみつこうとする勢力と、21世紀を見始めた勢力の戦いが始まっているように思う。ただ、どちらが最終勝者になるかは明らかだ。勝者に賭ける方が得することまちがいない。


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