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3月1日:老化を研究するための新しい動物モデル(2月26日号Cell 掲載論文)

2015年3月1日

老化の研究が進まない一因は、時間がかかりすぎることだ。モデル脊椎動物で老化の研究を行うとすると、マウスの寿命は3−4年、ゼブラフィッシュになると発生は早いが、寿命は5年もあるようで、老化を待つのが大変だ。例えば、多くの動物をその年齢まで生かしておくことで、餌代や場所代などコストが大変だ。この問題を解決するため、さらに寿命の短い脊椎動物を見つけ出してモデル動物に仕上げたのが今日紹介するスタンフォード大学からの論文で2月26日号のCellに掲載された。タイトルは「A platform for rapid exploration of aging and disease in a naturally short-lived vertebrate(生まれつき短命な脊椎動物を利用した老化や疾患研究のための新しいモデル)」だ。モデル化した脊椎動物はturquoise killifishと名がついたメダカに近い魚で、ターコイズというからにはトルコ石のような美しい色をしているのだろう。ウィキペディアで調べると大きくなっても全長6cmほどの魚らしい。しかしこんな魚をよく見つけてくると感心する。この魚はアフリカ原産で、短い雨季に一時的に現れる池に生息する。このため、雨季が終わるまでに急いで相手を見つけ、産卵した後、通常30−40日で、池から水がなくなるのと同時に一生を終える、いわば絶滅危惧種だ。この魚を実験室で飼っても、長く生きて6ヶ月だという。3ヶ月の寿命とされているショウジョウバエに匹敵する。逆説的な話だが、この短い寿命を利用して、老化や老化に伴う病気の研究モデルを開発したのがこの研究だ。このために、ゲノム、幾つかの組織の遺伝子発現を調べたトランスクリプトーム、エピゲノムなど基本となる情報を集め、データベースを構築している。その上で、CRISPR/Cas9によるゲノム編集が可能であることを確認してようやくモデル動物が完成する。構想してからここまで来るのにどれだけ時間がかかったのか、長期的視野に基づく大変な仕事だと思う。その上で、こうしてできたモデル実験系が確かに老化研究に利用できることを示すため、テロメアの長さを維持するテロメラーゼ遺伝子に変異を導入し、これまでマウスやヒトで得られた結果を、寿命が極端に短いこの魚でも見られるか調べている。テロメラーゼの活性がなくなると、期待通りテロメアの維持は不可能になるが、外からはあまり変化が見られない。詳細は省くが、詳しく調べると、1)生殖能がなくなる、2)血液や腸上皮などの増殖の高い組織での細胞数減少、3)上皮組織の構築異常、などを2ヶ月以内に検出することができる。さらに、CRISPR/Cas9を使うと、ヒトで見られるのと同じ様々な変異を導入できることも示している(何が起こるのかは示されていないが)。結果についてはこれだけで、何か新しいことが明らかになったわけではない。ただ最後に、これまで老化に関わることが明らかな13種類の遺伝子の変異導入ができていることも報告し、「今から解析を進めて面白い話が出てくるぞ」と期待をあおっている。研究としては、turquoise killifishの着目したことが全てで、あとはアイデア倒れに終わらず、モデル動物システムを完成させるために、長期視野に立って努力を重ねた点は高く評価したい。ただこの努力に水をさすようで悪いのだが、老化現象の大半は外界のストレスの積み重ねという側面が多い。遺伝的変異を導入して積み重ねの効果を促進できるにしても、寿命が短いという性質はこの目的と相反する。これをいかに克服出来るのか、次の論文ではぜひこの点を示してほしい。


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