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3月27日:薬を中止する治験(3月23日発行JAMA Internal Medicine掲載論文)

2015年3月27日

アメリカで盛り上がっているプレシジョンメディシンは、個人個人の病気を正確に把握して、各個人に最も合った治療を行うことだ。この推進をオバマ大統領が一般教書演説で表明した時、しかし彼の頭の中にあったプレシジョンメディシンは、ゲノムや生活習慣を正確に把握し、個人に最も適合した治療を選択することにとどまっていたと思う。しかし考えてみると、一人の個人は様々な病気を同時に持つことが多いし、そんな病気と一生という長い時間の中で付き合っていく必要がある。したがって、プレシジョンメディシンにも、一生という長い時間で個人とその病気を把握することが重要になってくる。今日紹介するコロラド大学を中心とした米国チームからの論文は、一見プレシジョンメディシンとは無関係の研究だが、私にとっては将来のプレシジョンメディシンを考えるために極めて重要な論文に思えた。タイトルは「Safety and benefit of discontinuing statin therapy in the setting of advanced, life-limiting illnesss. A randomized clinical trial (進行した疾患の末期にスタチン治療をやめることの安全性と利点、無作為化治験)」で、3月23日発行のJAMA Internal Medicineに掲載された。この治験は薬剤の効果を調べる治験ではなく、薬剤を使わないことの危険性や利点を調べるための治験だ。実際には様々な疾患(その多くはガン)の末期に入って、余命が確実に1年以内と診断されたスタチンを服用中の患者さんのスタチン投与を中止した時どのような問題が起こるかを調べている。プライマリーエンドポイントと呼ぶが、この研究の第一目的は投与中止後60日目の死亡率の算定だ。その上で、1年間追跡して自覚的な生活の質などを調べている。結果だが、60日目の死亡率はスタチンをやめても全く変化がなかった。また1年間の追跡で約2割の人がまだ生存していたが、中止群と継続群で有意の差はなかった。半分以上の患者さんが循環器病を持っていることでスタチンを投与されていたわけだが、ほとんどの末期の患者さんにとってはスタチンが命に関わる薬でないことがはっきりした。さらに、自覚的な生活の質向上ではスタチンをやめた患者さんの方が身体的にも、精神的にも状態がよくなったと感じており、やめたことに対する満足度も高いという結果だ。このように、本当のプレシジョンメディシンでは、一生の各ステージでそれぞれ個人に適合した治療を行うことが必要だ。その意味で、病気があるからただ薬剤を投与し続けていいのかも問われるべきだと実感した。しかし思いついたらこのような治験を行うこの研究グループには頭がさがる。


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