AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 4月5日:メラノーマの究極のプレシジョンメディシン(Scienceオンライン版掲載論文)

4月5日:メラノーマの究極のプレシジョンメディシン(Scienceオンライン版掲載論文)

2015年4月5日

ちょうど1年前AASJチャンネルに出てもらった岸田徹さんは、今自身の活動サイト、ガンノート( http://gannote.com/ )を通して活発な情報発信を行っている。ほぼ毎週と言っていいほどニコ生やユーストリームでガンを経験した人たちと対談を重ねており、今日は3時からメラノーマを経験された徳永さんと対談をする予定だ(http://live.nicovideo.jp/watch/lv216198423、or http://www.ustream.tv/channel/gannote)。ちょうどいいタイミングでメラノーマの免疫療法についての画期的論文が出ていたので紹介することにした。ワシントン大学からの論文「A dendritic cell vaccine increases the breadth and diversity of melanoma neoantigen-specific T cells(樹状細胞ワクチンがメラノーマ特異的なT細胞による免疫反応の幅と多様性を増大させる)」だ。昨年11月27日「論理的にガン免疫療法を進める手段が整った」とNature掲載論文を紹介したが(http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/2505)、今日紹介するワシントン大学の論文は論理的免疫治療が実際に可能であることを、メラノーマの患者さんで示している。この研究の目的は、メラノーマのゲノムを調べて、突然変異を起こした分子の中からガン特異的抗原を探し出し、これを樹状細胞と一緒に患者さんに投与してガンに対する免疫反応を誘導できるか調べることで、いわば究極のテーラーメード治療の可能性を探っている。研究では特定のHLA抗原を持つ進行したメラノーマの患者さん3人のガン組織を取り出し、蛋白に翻訳されるエクソームで起こった突然変異を全てリストしている。進行性のメラノーマでは250−500種類の突然変異が積み重なっている。次にこのガン特異的突然変異から、キラーT細胞免疫の抗原になりうるペプチドをコンピューターで割り出す。これにより、50−100種類のガン特異的抗原候補が特定できるが、さらにその中から実際にメラノーマで発現しHLA抗原に結合できるペプチドを選んでいる。もともと突然変異の多い進行性のメラノーマでは、この方法で確実に数種類のガン特異的抗原を見つけることがしめされ、嬉しい結果だ。詳しいことは省くが、こうして選んだ抗原の中にはワクチン免疫前から免疫が成立しているものが見つかる。ただ、反応は強くない。ところがワクチン投与後はこの反応が大きく増強される。また、これまで反応がなかった抗原に対しても免疫反応を誘導することができる。もちろん、誘導された免疫反応によりメラノーマが殺されることも試験管内の実験で確認している。他にも実際に特定されたガン抗原がガンに発現していること、反応する側の抗原特異的T細胞の特定や、ワクチン免疫後この細胞が体内で増加することなど詳しく調べた力作で、読んでいて本当に感心する仕事だ。しかし、一般の人にとって重要なことは、進行性メラノーマのほとんどで、ガン特異的抗原を見つけ、ワクチンとして免疫することで、ガンを殺すオーダーメード型のガン治療が可能であることを実際に示した点だ。今のところ治療を受けた患者さんに問題になる副作用は出ていないようで、もう少しすれば実際の治療結果も報告されるだろう。今回の研究は、抗CTLA4治療と組み合わせて行われているが、抗PD1も利用可能だ。いよいよ、ガン特異的抗原を特定した論理的免疫療法でガンを撲滅することができるかもしれないと期待を持たせる研究だった。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*