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7月25日:四つ足の蛇(7月24日号Science掲載論文)

2015年7月25日
「パンダの親指」、「ニワトリの歯」と、余分にあったり無くなってしまった形態を材料に進化の面白さを一般の人に伝えたのは、ティーブン・J・グールドだが、彼なら飛びつくキャッチーなタイトルの論文が英国ポーツマス大学からScienceに発表された。「4本足の蛇」とタイトルがついた論文(実際のタイトルは「A four-legged snake from the early Creataceous of Gondwana(白亜紀初期のゴンドワナ大陸に生息した4本足の蛇)」。)で、ブラジルのクラト近郊にある白亜紀の生物の化石が原型のまま保存されている地層で発見された蛇の化石についての話だ。南米白亜紀の地層はこれまでも多くの新しい発見を生んでおり、爬虫類や哺乳類の進化に興味を持つ古生物学者はこの地層に狙いを定めで化石の発掘を続けている。蛇に関して言うと、アルゼンチンの地層からNajashやSimoliophiidaeと名付けられた後ろ足と仙椎がハッキリ残る化石が出土していた。次は当然4本足が全て残る化石を発見しようとおそらく発掘が続けられていたのだろう。と言っても、努力だけでは今回のような発見はできないだろう。幸運の女神が微笑みかけた研究者の興奮が伝わる論文だ。話は、初めて4本足を持った蛇とみられる化石が見つかったという結果に尽きる。それではそっけないので、少し詳しく紹介しよう。もちろん百聞は一見に如かずで、論文に示された図を見ることなので、ぜひ一度ウェッブサイトを開いてみることを勧める。さて写真からわかるのは、間違いなく脊椎が150以上ある蛇だ。なんと腸のあたりには、食べた動物の骨が残っており、脊椎動物を餌にしていたこともわかる。後ろ足の腸骨、腓骨は後ろ足のある蛇NajashやSimoliophiidaeと同じだ。現在の蛇と比べると、顎が細く全般的に未熟な形態をしている。そして、退化はしていても明らかに前足が存在している。素人の私が見ても、人間の腕の構成とほとんど変わるところがない。残念なのは、後ろ足と違ってどこからどのように突き出しているのかがハッキリしないし、実際明確には述べられていない。いずれにせよ、初めて四つ足の蛇の存在が確認された。様々な形態的特徴を元にすると、オフィディアと呼ばれる蛇の先祖が、まず顎の骨の関節を獲得した蛇型の頭部構造を獲得し、体で締め上げるための構造を獲得し、歩くのに邪魔になった四肢をダウンサイズし、脊椎の数を増やして体を伸ばした後、前足から失ったという系統図が描ける。最後に、南米に見られる蛇の多様性から、おそらくこの系統進化はアフリカと南米が一つの大陸として繋がっていたゴンドワナ大陸で起こったのではと仮説を提唱している。また、これまで蛇はひょっとしたら水生の動物に変わることで手足を失ったのではという仮説があったようだが、4本足の蛇が見つかったことで、陸上進化説の可能性が強まったようだ。  自然史博物館を訪れると子供達は大型の恐竜の化石に群がるのを目にする。しかし、中学生以上にはぜひ、今回のような発見の重要性を教えてあげたいと思う。21世紀は一般の人たちが科学にもっと進出する時代になると思っている。化石の発見から得られる興奮は、これを担う次世代を育むための重要な教材になると思う。おそらくグールドもそんな思いで多くの本を書いたのだろう。

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