AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 11月15日:血小板を使うガンの診断(11月9日号Cancer Cell掲載論文)

11月15日:血小板を使うガンの診断(11月9日号Cancer Cell掲載論文)

2015年11月15日
血液を用いてガンを早期に診断する試みはこれまでも長く続いてきた。ガンで特に多く作られ血中に分泌される分子を利用する腫瘍マーカー検査は現在臨床応用され、ガンの進行を知るための重要な検査になっている。しかし、ガンの有無を診断する検査としては特異性や感度の面でなかなか決定的な腫瘍マーカーは現れていない。代わりに腫瘍から血中に出てくる核酸を利用して、ガン化に直接関わるガン遺伝子を検出する試みが進んでいるが、現在の技術段階では臨床検査として定着するには至っていない。今日紹介するアムステルダム自由大学からの論文はガン発生によって血小板に誘導される変化を使ってガンの有無を検出する方法の開発研究で11月9日号のCancer Cellに掲載された。タイトルは「RNA-seq of tumor educated platelets enables blood based pan-cancer, multiclass and molecular pathway cancer diagnostics (腫瘍の影響を受けた血小板のRNAはガンの有無、種類、そしてガン化の分子経路を診断できる)」だ。タイトルにもあるように、この研究は、血中の血小板に発現しているRNAは、巨核細胞の骨髄内での分化、血小板への成熟、血中に循環する間に起こる血小板内でのスプライシングなどの変化など、もともと長い複雑な過程を反映しているため、様々な疾患の影響を受け易く、このRNAの種類や量を調べることでガンの診断が可能ではないかという着想に基づいている。研究では他の方法で診断のついた様々なガンと正常者の血中から血小板を調整し、その中に含まれるRNAを次世代シークエンサーで調べ、RNAの発現パターンからガンと正常を比べることで、ガンの存在を予測できる推計的手法を開発している。こうして開発した方法を使ってガンと正常を区別すると、96%という正確さでガンの存在と相関することがわかる。さらに推計学的方法を進化させると、RASやEGFRなどのドライバーになっている発ガン遺伝子や、ガンの種類も一定程度推定が可能になるという結果だ。このアプリケーションは経験数を増やせば増やすだけそれを学んで発展する学習型アプリケーションなので、例えば現段階で膵臓癌と特定するのは6割程度で、直腸ガンの2割も同じように膵臓癌と判断してしまうが、インプットの数を増やせば診断率は上がると述べている。着眼点はよく、ぜひこのままうまく発展してほしいと願う。しかし一方で、この研究だけからはあまり期待しないほうがいいとも感じる。雑誌がCancer Cellということで、レフリーもガンと正常の区別だけを念頭に置いて審査しているようだ。しかし、複雑な血小板の一生は当然炎症や変性疾患など他の多くの病気の影響も受けるはずだ。とすると、比べなければならないのは正常とガンではなく、ガンと他の病気だ。それがまったく行われず、また議論もしないままこの論文が通るのは問題だと思う。もちろん着想は評価する。早く他の疾患との鑑別が可能か論文を出してほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*