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1月2日:サルも音楽がわかる(米国アカデミー紀要オンライン版掲載論文)

2016年1月2日
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昨日は年頭に当たって考える科学技術倫理問題を紹介した。1日遅れの申年最初の論文紹介のために、サルに関わる目出度い話を探していたら、ジョンホプキンス大学のグループが米国アカデミー紀要オンライン版に発表していた論文を見つけた。タイトルは「Complex pitch perception mechanisms are shared by humans and a new world monkey (ピッチの複雑な知覚メカニズムは人間も新世界猿=マーモセットも同じ)」で、申年念頭を飾るにふさわしい論文だ。しかも、タイトルから推察するとサルも音楽がわかるという話のようだ。
  読み始めて気がつくのは、なぜ人間が音楽を理解できるのか、科学的に調べるのは大変だということだ。この研究では、音楽のピッチのズレを感じる能力に焦点を当てて研究している。合奏中に音の外れた楽器や声を聞き分けられる能力といっていい。かくいう私も、このズレはよくわかる方だが、この体験を波形と言葉で表現している科学論文になると、どこまで理解できたか少しおぼつかない。
  ただこのピッチに関して、私たち人間が持つ感覚の特徴は次の3つにまとめられるようだ。
1) 低い音ほどピッチの変化を感じやすい、
2) ハーモニーが乱れている方がピッチの変化を感じやすい、
3) 高い音でピッチがわかりにくい時、音のリズムがはっきりしている方が変化を感じやすい。
 これは論文を読んでの私の理解で、正しいかどうか自信がないが、自分の体験を振り返って考えてみると、確かにそうかなと思う。
 さて、この感覚をマーモセットで確かめるのは大変だ。実際にはピッチのズレを感じたらレバーを押すように訓練したマーモセットで、特定の変化に様々な音をかぶせてテストしている。結果は予想通り、マーモセットもこの3つの特徴を持っているという結論だ。サルも音楽がわかる。めでたしめでたしの結論だ。 ついでなら音痴の人とサルの比較成績も知りたい気がする。
  音楽を科学にするのは難しい。しかし、関係性の認識を研究するのに音楽ほど面白い対象はない。実際、初めて聞いた音楽でも、作曲家がわざと挿入した不協和な音を認識できる。逆に作曲家は、最初のフレーズを聞いただけで私たちの頭に生まれる幻想に挑戦しているのだ。このやりとりが何を基礎に行われているのか、興味は尽きない。
 申年も、時間が許す限り多くの音楽を聞いて暮らそうと、年頭に当たって決意を新たにした。(横でカミさんが遊びたいだけと笑っている)。

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