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6月17日:地球をCO2排出問題の切り札に使う?(6月10日号Science掲載論文)

2016年6月17日
   科学ニュースと科学論文を掲載しているアメリカ科学振興協会の雑誌サイエンスは、20世紀が解決できなかった地球規模の様々な問題への挑戦を強く後押ししている印象がある。例えばこのホームページでも紹介したが、1昨年5月23日号では格差問題を特集し、「21世紀の資本論」で有名なPikettyと、昨年ノーベル経済学賞を受けたDeatonに貧困問題解決の総説を依頼している。例えば消費を抑え、富を分配するといったイデオロギーを人間が共有できない限り、格差問題といった社会・経済学的問題でも、サイエンスしか頼るところがないという強い意志の表れだろう。
   今日紹介する英国、米国、フランス、アイスランド、オーストラリア、デンマークからの共同論文もこの典型で、格差と並ぶ21世紀の課題、「炭酸ガス排出問題の解決法」に挑戦した研究だ。タイトルは「Rapid carbon mineralization for permanent disposal of anthropogenic carbon dioxide emission (人類が排出する炭酸ガスは迅速な鉱物化により永久に処理できる)」で、6月10日号のScienceに掲載された。
   もちろん私にとって全く分野外の研究だが、理解しやすい論文だった。研究の目的は、炭酸ガスを地中で炭酸カルシウムとして沈殿させ、大気中への排出を減らす可能性を検証することだ。
   研究では、アイスランドの地下400−800mに存在する玄武岩質の溶岩地層に排出炭酸ガスを溶かした水をゆっくり注入、地下水として周りへ拡散させ、500mほど離れた検出用の井戸で注入した炭酸ガスや水をモニターして、溶かした炭酸ガスの運命を調べている。
   注入した炭酸ガスに炭素14同位元素からなる炭酸ガスを混入し、自然の炭酸ガスと、注入した炭酸ガスを区別している。また、炭酸ガスを溶かせた水は混入させた6フッ化硫黄でモニターしている。
   詳細は省くが、結果は期待をはるかに超える結果で、注入した水は50日ぐらいをかけて検出井戸に到達するが、最初からほとんど気体状の炭酸ガスは残っておらず、無機物として沈殿したという結果だ。すなわち、玄武岩質からとけ出すカルシウム、マグネシウム、鉄の作用が、アルカリ性の地下水と助け合って炭酸ガスと反応し、重炭酸イオンを経て、最終的に炭酸カルシウム結晶に転換するという結果だ。
   研究を始めた時、これほど早い速度でほとんどの炭酸ガスが鉱物化するとは予想していなかったようだ。途中でサンプリングポンプが炭酸カルシウムで詰まるという問題はあったようだが、研究としては大成功だと言える。
   我が国は火山国で、玄武岩質の地層を探すのは簡単なことだ。だとすると、この結果は炭酸ガス排出を抑える切り札になるように思える。
   とはい、話は簡単でないだろう。このパイロットプラントでは全部で約250トンの炭酸ガスが処理されている。一方、我が国が排出する炭酸ガスは14億トンで、全部処理するとなると500万倍の規模が必要だ。    他にも大量の水の問題、地下水流への介入、炭酸ガスの回収、輸送などまだまだ多くの問題がある。
   しかし、この研究は地球自身が私たちの予想を超える炭酸ガス処理能力を持つことを示してくれた。この力を活用する可能性がどこまで実現できるのか、期待してみていきたい。

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