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7月13日:指しゃぶりとアトピー(Pediatrics8月号掲載予定論文)

2016年7月13日
   今日から3回、医学雑誌にはこんな調査まで掲載されているのかと驚いた論文を3編紹介しようと思っている。1日目はニュージーランドとカナダのグループが行った、幼児期の指しゃぶり、爪噛み習慣と、成長後のアトピーの頻度を調べた研究でPediatrics8月号に掲載予定だ。タイトルは、「Thumb-sucking, nail-biting, and atopic sensitization, asthma, and hay fever(指しゃぶり、爪噛み、アトピー感作、喘息、そして枯草熱)」だ。
   「指しゃぶりとアトピーの関係」と初めて聞いた読者は「なんと馬鹿な調査が行われているのか」という印象を持つはずだ。しかし、アトピーの原因があまりにも清潔な環境を求める我々の気持ちにあることを知っている私には、特に違和感はない。
    戦後ほとんどの先進国でアトピーの数は増加の一途をたどってきたが、この増加は石鹸の使用量と正比例すると言われている。すなわち、皮膚の防御機構をゴシゴシと洗い流して様々な抗原を体内にわざわざ侵入させているということになる。この考えが間違っていないことは、国立成育医療センターのグループが新生児に保湿オイルを塗り続けることで皮膚の防御層を守り、アトピーを防げることを示した論文でも示されている。
  もう一つアトピー増加の要因になっていると考えられているのが、腸内細菌叢の変化で、寄生虫の感染がアトピーを予防していることは科学的に証明されている。
   このように、清潔な生活を求めれば求めるほど、アトピーが増えているなら、不潔な習慣「指しゃぶりや爪噛み」は、子供をより不潔な環境に慣らしてアトピーを防いでいるのではと考えてもおかしくはない。
   研究ではニュージーランドDunedinで生まれたヨーロッパ系の乳児1037人を38歳まで追跡し続けた長期コホート調査で、5歳から11歳まで4回親に聞き取り調査を行い、指しゃぶりや爪噛みなどの習慣についての情報を集めている。アレルギーについては、様々な抗原に対する皮膚反応を13、32歳で調べると同時に、観察期間中に喘息や枯草熱を発症したかどうかを調べている。
  さて結果だが、13歳で皮膚反応テストが実施できた724人についてみると、指しゃぶりなどの「悪癖」のない子供の皮膚反応陽性率は49%に達した一方、「悪癖」を持つ子供は38%にとどまったという結果だ。内訳をみると、指しゃぶりか爪噛みかどちらか片方を持つ場合は40%、両方持つ場合は31%で、「悪癖」を持てば持つほどアトピーにならないという結果だ。同じ傾向は32歳時にも見られるが、有意差は境界領域で、結論としては少年期のアトピー防止に指しゃぶりは効果があるということになる。
   並行して調べられた喘息と枯草熱の発症頻度では、指しゃぶりと爪噛み両方の悪癖を持つ場合のみ、枯草熱の発症が低下しているが、これもアトピーテストほど明確な有意差がない。
   結論としては、期待通り、アトピーの発症に限れば「不潔」と思われる習慣も役に立つという結果だ。
   最近一緒に仕事をしている仲間から、親子のキスは歯周病菌を移植することになるから避けるようになっているという話を聞いた。逆に、スウェーデンの調査では、子供が落としたおしゃぶりをお母さんが舐めてから子供に渡すと、腸内細菌叢の多様性が上がるらしい。歯周病は歯磨きを真面目にやれば防げる。清潔を求めるあまり親子の絆まで不潔と排除してしまうと、とんでもないしっぺ返しがくるように思える。    清潔・不潔をもう一度科学的に見直すべきときがきたように感じている。

  1. 橋爪良信 より:

    私、小学校卒業まで爪噛みでした。アトピー無しです。

    1. nishikawa より:

      私も指に噛みダコができ、まだ残っています。

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