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7月26日 脳内の機能的シナプス量を測るPET検査(7月20日号Science Translational Medicine掲載論文)

2016年7月26日
    最近、水分子の拡散速度の違いを検出して脳内の神経結合をfMRIを用いて可視化する方法が可能になり、自閉症などの様々な病気の神経結合異常の特定に応用されている。とは言っても、神経間の結合は全てシナプスにより媒介されており、様々な病気での神経結合の変化を定量化するためには、シナプス接合の密度を測りたい。このため、シナプス接合で神経伝達因子の保持、遊離に関わるシナプス小胞をPETを用いて可視化するためのリガンド開発が進められてきた。
   今日紹介するエール大学PETセンターからの論文は炭素11でラベルしたシナプス小胞のタンパク質(SV2A)に結合するUCB-Jを用いると、人間の脳内で機能しているシナプスの量を測定できることを示す研究で、7月20日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Imaging synaptic density in the living human brain(生きている人間で機能するシナプス濃度を画像化する)」だ。
   この分野の専門誌を見ることはほとんどないので、脳内シナプスをが増加するためこれまでどの様な研究が行われてきたのかほとんどフォローできていない。しかし、この論文の著者らは、この論文がシナプス濃度の画像化についての最初の報告だと主張している。
   この技術のコアは、SV2Aに特異的に結合するUCB-Jの合成と炭素11同位元素での標識で、様々な全臨床研究を経て、実際の人間の脳での測定に利用できることを示したのが今回の研究だ。
   研究ではまずサルを用いてUCB-Jで画像化されているのがシナプス小胞のSV2Aであることを確認した後、まず正常人を用いてシナプス接合の多い灰白質にシグナルが集中していることを確認、またUCB-Jの結合動態を詳しく検討して、シナプス濃度を定量できることを確認している。
   次にUCB-Jの結合がSV2A特異的であることを示すために、同じタンパクに結合し抗てんかん薬として用いられているレベチラセタムと競合させ、レベチラセタム投与でUCB-JによるPET画像の強度が低下することを示している。
   最後に内側側頭葉の梗塞の結果てんかんを発症した三人の患者さんに適用して、梗塞部特異的のシナプス量を、例えば反対側の52%程度と正確に定量化でき、てんかん症状と相関させられることを示している。
   結論として、画像の広がりや定量性を比べると、これまで用いられてきたグルコースの取り込みや、MRIとは質的に異なる画像がUCB-Jを用いたPETで得られ、今後様々な病気に利用できるといえるだろう。
   素人ながら今後を考えると、tauタンパクの蓄積画像を定量できる様になってきたアルツハイマー病のシナプス機能測定にまず用いられるだろう。しかし本当にこの技術が役に立つのは、小児の脳発達とその異常の把握だと思う。そのためには、さらなる安全性とともに、シナプスの絶対量についての定量性の確認など調べるべきことは多い。しかし、期待は大きい。

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