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毎日新聞10月16日:赤ちゃんの脳:出生引き金で神経回路形成 金沢大など発表

2013年10月16日

元の記事は以下のURLを参照して下さい。
http://mainichi.jp/select/news/20131015k0000e040045000c.html
  これも毎日新聞にはよくある共同通信の記事の転載だ。この研究は、脳の研究としては一般の人にもわかりやすく、脳の発達は一般の関心も高い事を考えると、もう少し背景も含めて報道しても良いのではないかと思う。
   この仕事は、金沢大学・河崎さんたちの仕事で、Developmental Cellの最新号に掲載された。河崎さんはアメリカ留学後ずっと、脳の感覚領域が再構成される過程を研究している。特殊な染色をすると、感覚器の体内の位置に対応する脳内の領域を組織学的に目で見ることが可能になる。特にマウスでは、髭の触覚に対応する脳内感覚領域についての研究が進んでおり、実際髭の並びに対応した脳内の区域がはっきりと見える(一本一本の髭に対応したバレルが出来ていると表現する)。このバレルが、外的な刺激に応じて出来るのか、あるいは内的な機構により刺激が無くとも出来るのかがこれまで議論されてきているが、髭のバレルは、今回実験でも示されているように、髭を抜いても形成されることから、外的刺激により形成される訳ではなさそうだ(多分この辺についてはいろいろ異論もあるかもしれない)。今回の仕事では、刺激でないとしたらどうしてバレルが生後に誘導されるのかを研究した。最初の発見は、プロゲステロンを抑制して早産させたマウスでは、バレル形成が早まる現象だ。この現象と関わる可能性のある原因を一つ一つ検討し、河崎さん達は、1)出産自体が必要十分な刺激であること、2)これには出産後すぐに起こるセロトニンの減少が原因になっている、と言う2点を完全に証明した。バレルがどう形成されるかについては更に研究が必要だが、何が引き金になるのかが決まったことは大きい。また、なぜセロトニンが減少するのかについても、ある程度のめどがついている。実際、セロトニンは脳の発達に重要であることが知られており、それがいったん下がることが重要であることを示すこの仕事は意外性があり面白い。この分野は結構競争が激しそうで、Journal of Neuroscienceの10月号にもフランスのグループが、遺伝子改変マウスを用いてセロトニンがバレル形成にどう関わるかを詳しく調べている。しかし、河崎さんの仕事は、生まれるという出来事がセロトニンの減少を通してシグナルを発することを示した点で、重要性が高く、今後も期待したい。


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