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10月22日:意外にも年齢が高い程、体外受精による胎児発生異常は少ない(10月17日International Journal of Obstetrics and Gynecologyオンラン版掲載論文)

2016年10月22日
最初の体外受精は英国の医師ロエドワーズ博士により1978年に行われた。そして、普及は急速に進み、我が国では全出産の2%を超えているのではないだろうか。様々な批判はあったが、この普及ぶりを認めて、エドワーズ博士には2010年のノーベル医学生理学賞が送られている。
   すでに30年以上が経過し体外受精が当たり前の技術になっても、この技術については倫理的、医学的な根強い批判が続いている。その最大の理由は、生殖補助医療(ART)による出産では、発生異常の確率が高いことと、この治療を受けるカップルの経済的・精神的負担の問題だ。
   今日紹介するオーストラリア・アデレード大学からの論文は、南オーストラリア地区で1986年から2002年にかけて生まれた児童を対象にARTの影響を追跡調査した研究だが、私の予想を完全に裏切る結果に驚いた。タイトルは「Maternal factors and the risk of birth defects after IVF and ICSI: a whole of population cohort study(体外受精と顕微授精による出産時異常発生リスクに関する母体要因:全出産児対象コホート研究)」で、10月17日にInternational Journal of Obstetrics and Gynecologyオンライン版に掲載された。
   この調査では約30万人の出産を対象に、自然妊娠、体外受精、顕微授精による出産に分け、死産、早産、異常発生の診断に基づく人工流産、400g以下の体重など全てを出生に関わる異常としてカウントし、統計を取っている。
   さて結果だが、予想通り体外受精、顕微授精では出生時異常が7.1%, 9.9%と自然妊娠の5.8%に比べるとかなり高く、これまでの統計を裏付けている。しかし驚くのは、出産時の年齢を30歳から40歳以上と、5歳づつ区切って統計を取ると、正常妊娠では出産時異常率が、年齢とともに上昇する(30歳前は5.6%だが、40歳異常では8.2%)のに対し、驚くことに体外受精と顕微授精での異常率を各年齢ごとに調べると、30歳以前(9.4 and 11.3%), 30−34歳(6.1 and 9.9%), 34歳から40歳(7.7 and 9.4%)、そして40歳以上では(3.6 and 6.3%)と年齢が高いほど異常率が著明に低下している。
  もちろん母親の他の健康条件により、異常率は大きく左右されるが、30万人という十分な数で見たとき、予想に反しARTによる出産は、年齢が高いほど異常率が低下するという結果だ。
   体外受精の場合、受精後試験管内で胚を培養して正常胚のみを着床させるが、おそらくこの選別過程で年齢の高い母親からの胚ほど選別容易であるためだろう。要するに、年齢の高い母親からの胚では小さな異常でも試験管内及び着床までの過程が損なわれ、よほど強い胚だけが着床できるため、その後の異常率が減るのだろう。他にも様々な理由は考えられ、今後基礎的な研究も必要だ。研究から、新しい正常胚の選び方が明らかになるかもしれない。いずれにせよこの分野にとっては、重要な発見だと思う。
   もちろん年齢が高くなるほどARTの成功率は落ち、またこの技術は個人のスキルに負うところも多い。従って、一概にこの調査結果が我が国に当てはまるかどうかはわからないが、我が国でも正確な調査を行って欲しいものだ。

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